2-1ついつい後回しにしてしまった
「ハッ」
私はふと気づいて起き上がる。ちょうど王都の方で話題のお菓子を、自室のベッドでダラダラ寝転びながら食べているところだった。シーツが汚れてもベッドごと新しい物に交換すればすべて白紙に戻る。そんなことを考えながら至福の時間を過ごしている最中に、ある事を思い出したのだ。
「また、先延ばしにしてしまったわ」
というより忘れていたという方が正しい。トーマスと魔法放送をした日から、かなり時間が過ぎてしまった。どれくらい日にちが過ぎたかというのを、正直に数えるのが嫌になってしまうほど。
「さすがに、そろそろ動き始めなければいけないわね」
このまま欲望のままに過ごしたいのだが、それをしてしまえば処刑。明日やろう、今度やろう、いつかやろう、処刑の流れだわ。
何をするかはすでに決めてある。おおよその計画もたててあった。あとはそれを三人に聞かせてやれば、アリードが良いようにしてくれる。私は指示をするだけなのだ。
「三人を集めるか」
専属メイドとの個別の魔法回線を使う。ルーにトーマスとアリードを連れてくるように頼んだ。
しばらくするとトーマスがやってきて、少し遅れてルーがやってくる。二人は部屋に入ると並んで壁際に待機した。アリードはまだ来ていない。専属の二人と違って、アリードは仕事を抜け出してこなければいけない。それに私の悪だくみを手伝っていることを、悟られない様に指示してある。そのせいで余計に時間がかかるだろう。
「アリード様に声をかけてきたんですが」
時間がかかっていることを見かねてだろう。ルーが申し訳なさそうに、そう口を開いた。
「いいわ、問題ない」
部下を自由に動かせないのは、正直もどかしいが仕方がないのだ。
「……それより、ヴィー様」
ルーがそう声をあげて、私のいるベッドの前まで進み出る。ずっと待ち望んでいた、という感じで言葉をつづけた。
「早くその恰好を……寝間着姿からお着替えください」
そういえば、部屋でだらけるためにネグリジェのままだった。いや、ドレスに着替えた覚えが無いな。ここ数日間は部屋にこもってだらけていて、ルーに身支度を命じた覚えがない。
「いつお命じ頂けるか待っていたのに、いつまでたっても身支度をされないから」
ルーが両手を握りしめて、胸の前あたりで上下に振っている。だから先ほどの表情か。
「面倒だわ……いいじゃない、これで」
「ダメです!」
振っていた両手の拳を、言葉と共に一気に振り下ろした。
「アリード様は男性です……トーマスもですが……そのような格好をしていてはいけません!」
「男性って、私の歳の様な子供に欲情するタイプではないわ」
というか同世代の女にさえ、興味が無さそうだが。
「そういう問題ではなく、レディとしての在り方の問題です!」
もう何も聞き入れるつもりはない、という様にルーがとびかかってくる。まぁしょうがない。なされるがままに、着替えをする事にした。




