1-27次にやる事は……
私の狙いは当たり、トーマスは牢獄に戻されることはなかった。父上は短絡的だ。結果的にマズイことになろうと、トーマスを牢獄に戻そうとしただろう。だがそうならなかったのは、アリードがうまくやってくれたかららしい。末席だろうとアリードは政務官の一人なのだ。
だが、さすがにいきなり騎士にするのはできないという事だ。一般教養不足や、そもそも年齢が若すぎるという事だ。時が来るまで、使用人兼ボディーガードに収まる事になった。
領民への放送については、半分成功して、半分失敗していた。この街では放送されたが、他の街ではノイズだらけで、ほとんど内容はわからなかったらしい。魔力の出力不足が原因だ。かなりの出力で供給していたが、相当の魔力が空中に霧散してしまい、設備に届いたのは僅かだったという事だ。
まぁ失敗ではない。その証拠に街ではこの話でもちきりになり、活気づいているらしい。この分なら噂はすぐにでも領内全土に広がるだろう。上手くいけば国全土へ。これで私の野望の第一歩が果たされた。
「ヴィオラ様、今回の事でお父上、サベルアルト様は、国王に睨まれた様です」
「くははっ、いい気味ね」
昼食へと向かう最中、隣を歩きながらアリードがそんな報告をしてくる。アリードは何も言わないが、私側についたらしい。これだけ優秀な人材が転がり込んでくるなんて、本当に幸運だわ。
「……ただ、言い訳をしたようで」
「なに?」
「全ての責任はヴィオラ様にあり、自分は止めようとした、だが止められず申し訳ないと」
「酷い!」
アリードの言葉を聞いて、ルーがすぐさま声を上げる。それに同意するようにトーマスも呟いた。
「……本当に」
「二人とも、いいのよ」
あの豚の行動など、想像はできていた。私を溺愛していたが、その実そんな自分に酔っていただけだろう。心優しき父親を演じて、悦に浸っていたのだ。
「……目障りね」
「まだ、堪えてください、街の支持率は」
耳打ちするようにアリードがくぎを刺してきた。
「始めたばかりで、すぐに望む域に達しない事くらい理解しているわ」
苦笑しながらアリードにそう返す。アリードは「申し訳ありません」と頭を上げた。
トーマスとルーは私たちのやりとりを見て、首をかしげている。この二人には基本的に後ろ暗い話はしない事にしている。そんなのダメだと言われるのが、目に見えているからだ。
その点、アリードは話が分かる。来るべき日の事をすぐに理解し、必要な情報を集めてくれている。本当に使える男。くははっ。
「トーマス、ルー、これから忙しくなるわよ」
突然言ったにもかかわらず、トーマスとルーはほとんど即答で「はいっ!」声を上げる。子犬一号と子犬二号のごとく、尻尾を振っているように見える。
「次にやる事は……」
そこまで言った所で、お腹が鳴りそうな感覚を感じて言葉が詰まる。いかん。私の威厳が。
「昼食よ! 話題の店の料理人を呼んであるのよね?!」
「えぇっ」
トーマスが驚いている隣で、ルーが微笑みながら「はい」と頷いた。呼びつけても来なければ鞭打ちの刑にするつもりだったが、ちゃんと来たようだ。心が弾んでくる。
「わっだいのちゅっうしょくぅぅぅ、ふぅぅぅっ」
つい足取りが軽くなってしまい、小躍りで廊下を進んでしまった。
領地作りの滑り出しは良好だと言っていい。贅沢三昧わがまま三昧しても揺るがない盤石な領地作り。そのために今は話題の昼食で英気を養うのだ。




