1-24強い騎士になる。希望となりえる。
放送室に入ると、鍵を閉める。一度息を吐いてからトーマスに向き直った。
「これで、一旦一息付けるわ……ゆっくりはできないけどね」
「ここは……放送室というのは」
トーマスは良く分からない、という顔で問いかけてくる。放送という事さえわからないかもしれない。日々を必死で生きるスラムに居れば、放送を目にする機会はあっても、気に留めていない可能性はあった。
「魔法放送をするための施設……領民に向けて何かを知らせたり、そういう使い方をした事はあまりないけど、避難指示とか緊急時に使われたりするわ」
「あぁ、あの立体の……見たことあります、内容は全然」
トーマスは申し訳なさそうに少しうつむく。
「別にいいわよ、そんな事で」
本当に何でもない話である。それより、先ほどの話、アリードについて全く気にしないのには少し驚いた。そちらの方が根掘り葉掘り聞かれるかと。
「ところで」
「はい」
聞かれないのなら、そのままにしておけばいい物を、ついこちらから話を振ってしまう。
「……アリードの件、何も聞かないのね」
「ヴィオラ様が大丈夫と言ったので、ヴィオラ様を信じているだけです」
あっ、キュンッ。信じてくれるのはとてもうれしい。それに今は放送に関して話をしなければいけない。
「それに、アリードさんは、ヴィオラ様の仲間になるでしょう、そうなれば自己紹介する機会は沢山あると思うので」
「……なるほど」
私がアリードに認められないなんて、つゆほども思っていないらしい。心の底から嬉しいが、それを表に出すのはなんだか恥ずかしい。そのせいで、フンッとつっけんどんな笑いを浮かべてしまった。我ながら素直になれないというか。
「……放送を始めれば衛兵がここに集まってくるわ、でもそれまでは私の狙いに気づいている者はアリードだけのはず、少しの休憩とこれからの事を説明するわ」
「はい!」
私の計画は、この魔法放送を使って放送をする。放送する内容はスラムの子供であるトーマスを私の騎士として取り立てたという事。これが最優先だ。そしてトーマスの姿を全領民に見せる。そうすればトーマスを処刑はおろか、下手な扱いはできなくなるはずだ。
そして、さらに将来どんな者でも、努力すれば上級階級に上がれる領地を作ると宣言する。トーマスはその象徴として、全領民の希望になるのだ。これで既成事実が出来上がる。不慮の事故を装ったり、その他いろいろトーマスを消す方法はあるものの、今よりかはまだ安全になるはずだ。
計画をトーマスに話して聞かせると、驚いてうつ向いてしまった。少し怖がっている様子だった。だがそれから顔を上げて、強い光を宿した目で私を見返してきた。トーマスは大丈夫だ。強い騎士になる。希望となりえる。




