1-23見極めたい、という事か
「ヴィオラ様、あなたは社会階級の固定化を無くしたいとおっしゃった」
「その話は、父上と母上にしか話してないのだけど?」
アリードは小さく頷くと、口を開く。
「私の手の内は、あなたを見極めるまでは、明かせません、どうかお許しください」
「手の内ね」
どうやってか、あの部屋の中の話を盗み聞きしていたらしい。暗殺に失敗した時も、同じ方法で知ったのかもしれない。
「話を戻しますが、あなたはそこの男の子を騎士にして、それを公表し、社会階級の固定の廃止を公約する、と」
「そうね」
「それをふまえて……トーマス君に手を出させないため、それから今の時間帯、それらから推測すると、ヴィオラ様はトーマス君を助けた後、すぐに全領民にご自分の考えを知らせるのではないかと考えました……もっと詳細に考えた内容をお話ししたほうがよろしいですか?」
その問いに私は顔を横に振る。必要ない。おそらく全部読まれている。私の目的の部屋は放送室だ。全領民に魔法で放送できる設備がある。そこでこの夕食時に、トーマスの件と、私の考えを公表するつもりである。
やっぱりこの男は、このグリム家に仕える人間の中で抜群に優秀だ。絶対に傾かない領地を作るのには、この男は不可欠かもしれない。今回は敵にするべきではない。
私はトーマスの肩に手を置いて「大丈夫よ」と伝えて退かせる。それから一歩前に進み出た。
「それで、どうする気かしら? 阻止するために来たの?」
「まさか」
アリードの答えは、ほとんど即答だった。そして、目的の部屋を譲る様に優雅にそこを退く。目的が分からなかったが、これで何となくわかった。阻止する気なら、窓から飛び降りた時点で衛兵に報告しているだろう。見極めると言った。それに前の人生で私を窘めてきた。
アリードはこの領地を変えたいと思っている。場合によっては、この国さえ変えたいと思っているかもしれない。私も想像したが、独立の可能性さえ考えられる計画なのだ。アリードも同じ想像をしたかもしれない。そして、支えつき従う価値があるか見極めたい。そういう事なのだ。
「トーマス行くわよ」
「は、はい」
戸惑い気味で返事をするトーマス。私は気にせず、放送室に向かって歩き始める。
「アリード、しかと見ていなさい、あなたが真に仕えるべきはあの豚どもではないと証明するわ」
それだけ伝えると、放送室の扉に手をかけた。するとアリードが呟くように問いかけてくる。
「あなたは変わった……いや、もしかして隠していたのですか? 私はヴィオラ様を見誤っていたのでしょうか」
アリードの言葉を、肯定も否定もしない。振り返りアリードに笑顔を見せる。
私は放送室の扉を開いて中に入る。アリードはその場を離れていった様だった。




