1-20こんな牢屋、魔法でぶっ飛ばす
「そうよ! ヴィオラよ! 助けに来たわ! どこ?!」
「ここです! 俺はここです!」
今いる場所より、さらに奥から声が聞こえる。声を頼りに奥の方へ急ぐ。しばらくお互いに呼び合って進み、やっとトーマスの姿を見つけることができた。鉄格子に体を密着させて、こちらに必死で手を伸ばすトーマス。傷もなく、元気そうな姿にひとまず安心する。鉄格子の前まで移動すると、目いっぱい伸ばしていたトーマスの手を取り握りしめた。
「よかったわ、何もされていないわね」
「はい……すみません、俺がヴィオラ様を守らなければいけないのに、逆に助けてもらって」
アッ、キュンッ。尻尾をだらんとしてしまった犬の様に、トーマスはうなだれて居る。本当に一瞬犬に見えたわ。可愛い。撫でまわしてやりたい、とさえ思ってしまう。
「コホンッ……トーマスは悪くないわ、父上がすべて悪いのよ」
そんな言葉をかけても、トーマスは責任感が強い。あまり納得は出来ていない様子で、それでも小さく頷いた。寄り添って時間をかけて元気にしてやりたい、ぐへへっ、だがあいにく誠に残念だが時間がない。
「……急いでここを出るわよ、早くしないと衛兵がわらわらやってくる」
戦ってもいいが、決着のつけようがないだろう。何よりトーマスに罪状を与える口実にされかねない。それより『アレ』を使って、私の考えを実行してしまった方が、トーマスに手を出せなくなる。
「でも、どうやってここから出れば」
「それは簡単」
不安そうに呟くトーマスに、何でもない様に返す。本当に何でもない事だ。私を誰だと思っているのか。
「こんな牢屋、魔法でぶっ飛ばす」
「ま、魔法で?!」
目を白黒させるトーマス。スラム街にいたせいで、おそらく目にしたことがないのだろう。だから知らなくて当たり前だが、魔法は強力だ。ただし、魔法が使える犯罪者がいるおかげで、牢屋なんかはかなり丈夫に作られている。ちょっと名の知れた魔法使いでは、破壊不可能なくらいには。
「ちょっと端によっててもらえるかしら?」
トーマスを牢の端の方に誘導した後、空いたスペースに向かって右手を向ける。ここは半地下である。つまり壁の上半分は外に面している訳だ。実際、壁の上部についている窓から光が差し込んでいる。あそこを壊せば、外へと通じる出口の出来上がりという訳だ。
「エクスプロージョン」
声と同時に爆発が起き、鉄格子を含む牢の半分が吹き飛ぶ。爆風によって巻き上がった瓦礫の土埃が辺りに充満した後、すぐに外から入り込んできた空気によって、埃が薄まっていく。視界が良好になると、鉄格子は円形に穴が開き、その先の壁は崩れて外の地面が抉れているのが見える。よし、開通した。




