1-18可愛い姿が早く見たい
窓から飛び降りると、魔法で着地をしてすぐに植木の陰に隠れる。魔法のおかげでほぼ無音。誰にもバレていないだろう。まぁ落ちている最中を誰かが見ていた可能性もあり得るから、ゆっくりはしてられない。
ふと先ほど誰かが隠れたように見えた場所に、視線を移す。窓からの脱出を警戒していたのなら、この段階で姿を現すはずだが。
「やっぱり勘違いね」
誰も現れる気配はない。
「早くトーマスを助けに行かないと」
子犬の様に震えるトーマスを思い浮かべる。あっキュンッ。でも私の姿を見た瞬間、キリっとするのだろう。可愛い。
「はっやくー、トーマスのー、かわいいすっがたー、みったいー、ぐへへっ」
行動開始だ。
牢獄は館の一階から少し地下に埋まった形、いわゆる半地下になっている。記憶が正しければ、その入り口は領主家族の生活区画から見えない場所にあったはずだ。使用人たちが移動したり準備したりする、そんないわゆるバックヤードにあるのだ。バックヤードだから、使用人は勿論いる。だが私が一睨みすれば黙って逃げていくだろう。
バックヤードに入ると、予想していた通り使用人たちは、驚き頭を下げながら後退って逃げていく。少し位の高いであろう使用人は声をかけてくるが「黙りなさい」と一言かければ、他と同じような反応をした。楽々牢獄の入り口近くまで来ることができたが、そろそろ私の脱出がバレてしまう頃合いだ。急がないと。
曲り角に身を隠しながら、牢獄の入り口を確認した。見張りが二人いる。当たり前だがこの二人だけのはずはない。中にもたんまり衛兵がいるのだろう。なにせ父上、あの豚領主はその選民思想から、平民以下の者を気に入らないという理由で罪人として牢獄に放り込んでいる。罪人がたんまりいれば、衛兵もたんまりいるだろう。
「頭が悪いわ」
牢獄に入れれば、その分だけ税収が減る。それどころか、少ないと言っても食事にお金がかかるし、無駄に衛兵が増えていて、給金も増える。
「愚物など、生かさず殺さず税を搾り取る方が、確実に益になるというのに」
父上も、愚物という事か。貴族か平民かなど、関係ないのかもしれない。身分でその人間の価値は、決まらないのかもしれない。
「……今はトーマスよ、いろいろ終わってから、考えましょう」
見張りをどうしようかしら。私の脱出はもう知られている頃合いだろうから、もう堂々と行って捕らえられそうになれば気絶させるか。衛兵たちは実際に私を捕らえるとなると、躊躇するはずだ。戦士だろうと、気絶させるくらい簡単だろう。
「よし、行くわよ」




