1-14謹慎という名の軟禁状態
別室に控えさせていたトーマスは、投獄されてしまった。私は自室で謹慎という名の軟禁状態。ため息が出てしまう。あの豚どもは。たとえ親でも、私の邪魔は許せない。もうそろそろ頃合いかしら。
「それより今はトーマスの事ね」
トーマスはスラムの人間。さっきの話から分かる通り、もちろん人扱いなんて望めない。下手したら領主館に侵入した罪とかでっち上げられて、殺されてしまうかもしれない。いや、罪をでっち上げるのは人間相手か。ただ殺されかねない。
「せっかく見つけた逸材だ、助けないと」
どうするかはそのあと考える。早く行動しなければ。
「まずはこの部屋から脱出」
もちろん部屋の外には、見張りが立っている。 倒すのは簡単だが、騒がれると面倒だ。
「こっそり窓から出れば問題ない、が」
まだ明るい窓の外に視線を送る。外に見張りがいるかどうかはわからない。今日、窓から外に飛び降りる所をメイドに見せてしまった。あの件が報告されていたら、窓からの脱出を警戒されてしまっているだろう。
あのメイドには、口止めをしたわけではない。それに好かれていない。私の為に秘密にしておく義理はない。報告しておけば、何かあってもあとから責められることはないのだから。
そんな事を考えていると、ドアがノックされる。こんな時に。
「誰?」
「失礼します」
この声は件のメイドの声。このタイミングで。私は引きが強い。今回は幸運かどうかわからないが。
メイドが部屋の中に入ってくる。外に立っている見張りと目が合った。すぐさまドアが閉められて一瞬だったが。
「ちょっとこちらへ来なさい」
手招きすると、メイドが体を強張らせて緊張した面持ちで寄ってくる。ドアからできるだけ離れた場所に移動して、そこで小声で問いかけた。
「あなた、私が窓から飛び降りた所、見たわよね」
「はっ、はい」
なぜか、驚いたように返事をするメイド。何を驚いて、と小さく声を上げると、理由をポツリと返してきた。
「私の顔を覚えていただいている事に驚いて」
「? 当たり前じゃない」
さすがに専属メイドの顔は覚えている。名前は知らないが。まぁほかの使用人は、正直区別できていないのだけど。
私の答えに、メイドは驚いて少し後退った。いや、そこまで。しかも感動しているようにも見える。私はニヤリと笑ってしまいそうになり、何とか抑えた。これは利用できる。
私は可能な限り優しい顔を心掛けた。
「あなた、あの件は、私が窓から飛び降りた件は、誰かに喋ったかしら?」




