1-11子犬系男子
「ありがとう、ございました」
男の子が少し戸惑い気味でそう口にする。後ろには伸びている先ほどの愚物。
「これがあなたの実力よ」
自分の力を確かめる様に、拳を広げたり握りしめたりするのを繰り返す男の子。初めての魔力に、戸惑いを隠せないという感じだ。私でさえそうだった。みんなそういう物だ。
「想像していた魔法と少し違って」
男の子がそう呟いた。魔力の種類は二つある。体を駆け巡り、尋常ではない力を発揮できる内魔力。そして、形を変え体外に排出、つまり魔法に使用できる外魔力。男の子は内魔力の持ち主だった。そして、想像していたであろう魔法は外魔力だ。
「その辺もまた今度教えてあげるわ、まずは魔力に慣れる事……知識はそのあとの方がわかりやすいわ」
内魔力は基本的に体術。全く頭を使わなくていい訳ではないが、基本的に体で覚える物だ。それに内魔力は魔法に使っても大した威力は出ない。逆に外魔力は体に巡らせてもちょっと力持ちになれる程度だ。まぁ、つまり難しく考えるより、体を動かせという事だ。
「わかりました」
全面的に私を信頼してくれているらしい。男の子がこちらをジッと見つめる。なんだか犬を思わせるビジュアルというか。とても撫でまわしたくなる子犬系の子だ。
「私と君は相性がいい、私の騎士にピッタリだわ」
私の魔力は外魔力。魔法使いなのである。そしてこの子は内魔力。戦士だ。前衛と後衛。理想のカップル。運命だ。子供のうちから理想の男に育て上げて……ぐへへ。
「騎士……」
実感を求める様に、男の子が呟いた。当たり前だ。お互い自己紹介さえしていない。私の身分も明かしていないのだ。そんな相手に騎士にしてあげると言われても、本当なら真に受けない。この子は純粋で騙しやすそうである。
「……自己紹介をしましょう、私はヴィオラ・グリム、あなたの住むこの街の領主の娘……知らないか」
今日を必死で生きていたスラムの子が、知るわけがないだろう。身分を証明できるものもないし、どうしたものか。そう頭を悩ませていると、男の子は後退り、それからぎこちなさそうに土下座をする。言葉だけで信じたらしい。何という素直な子。それに一応そういう反応ができるのね。純正のスラムの子ではないのかしら。
「……名前を教えて」
「トーマス、です」
「トーマス……あなたは騎士になるのよ、作法を覚えなさい……この国の騎士の礼は片膝をつき頭を少し下げる」
それを聞いたトーマスは、ハッとした様子で顔を上げて、すぐに指示通りの姿勢になった。あっ、キュンッ。ぎこちないけど、なかなか。




