エピローグ4
「あれ? 平民の子? 一人ですけど」
ルーがそんな声をあげて、ある方向を指さした。そちらに目を向けると、確かに見すぼらしい格好の女の子が一人。明らかに貴族の子息ではないし、周りに主人らしき貴族はいない。というか、使用人ならあんなみすぼらしい格好でいるはずはない。
「あれは」
あれは魔法学校の例外のもう一つ。平民でありながら誰かの使用人としてではなく、単独で入学を許された特殊な人物。これまでの歴史でほんの一握りしかいない、光の精霊に愛された者。
ソフィーだ。
前の人生で目障りだった存在。がっつりイジメていた相手だ。ソフィーは目立つ存在だった。平民で光の精霊に愛された人物。当たり前と言えば当たり前だ。それゆえか、殿下をはじめとした身分の高いイケメンに、常に囲まれていた。オースティもその一人だった。
別にオースティの事が好きという訳ではない。なのだが、自分の知り合いの男が、知らん女にデレデレしている所を見ると、なぜかイラっとするではないか。そのおかげで、オースティともども、ソフィーに敵意を向けてしまっていた。
今回は仲良くするべきだろう。おそらくオースティの好意はソフィーに向かう。つまりソフィーへの敵意は、オースティへの敵意と認識される。逆に好意は好意になる可能性が高い。これで革命が起こる可能性を下げられる。
「よし、挨拶してくるわ」
「え? 挨拶?」
ルーが驚いた声をあげる。関わりのない平民に挨拶するというのが、きっと珍しいのだろう。普通の貴族ならそんな事をしない。
「さすがヴィオラ様、平民に分け隔てなく」
トーマスの感心する声が聞こえてきた。二度目の人生にはトーマスが居る。心穏やかに天然ぶりっ子姫プをかます女子に接することができる。大丈夫だ。私は一歩踏み出して、ソフィーの元へ向かった。
「こんにちは」
私は微笑みながら、ソフィーに声をかけた。とりあえず、この時点ではこの子が誰かは私は知らない。どうして入学することになったのかも知らない。そのおかげで一度目の人生の時「何でここに平民が? 汚れるから消えなさい」とエクスプロージョンをぶっぱした。
まぁ、オースティが現れ防がれてしまい、ソフィーを殺せなかったのだが。それが決定打になり、険悪になったのは言うまでもない。
「迷子かしら? 助けは必要?」
ソフィーが目を見開く。まぁ、いきなり平民が貴族に声をかけられたらそうなるだろう。ややあってソフィーの表情が変わる。それは戸惑いの表情ではない。険しい表情。
「……ゲームと、違う……繰り返してるせい?」




