エピローグ1
「やっぱりヴィオラちゃんが座るべきじゃない?」
執務室の豪華な事務机に収まった母上が、少し困ったようにそんな事を口にする。父上が倒れた次の日に、朝から嬉しそうにこの部屋にやってきたのは誰だったか。私はそんな母上に手を引っ張られて、連れてこられたのだ。
「領主代行は母上ですよ」
母上は私を座らせようとしたのだが、断って逆に座らせた。誰も見ていないが、一応体裁だってある。私は何でもないただの令嬢なのだ。母上という領主代行を差し置いて、私が座るのは不自然すぎる。
「私はヴィオラちゃんの凛々しい姿を見たかったのに」
それで、私を連れてきたのか。少しため息が出る。大丈夫だろうか。私は魔法学校に行くから、母上に任せる事になるわけだが。まぁアリードがいるから、何かあれば何とかしてくれると思うが。
「失礼します」
ドアをノックする音とともにアリードの声が聞こえた。ちょうどアリードの事を考えていた所だ。タイミングが良い。私はアリードを中に招き入れる。
「誰かいると思えば、お二人でしたか」
「えぇ、まぁ……それより、魔法学校入学の件、大丈夫よね?」
「はい、ご指示通りに」
アリードは軽く頭を下げると、そう返事した。聞いていた母上は驚いた表情をしながら「え? 行くの?」ともらす。必要ないとでも言いたげだ。別に学びに行くわけではない。だが、あそこには行く価値がある。
「もちろん、まぁ入学はまだ少し先ですが」
いろいろ根回しなどなど、早めに行動しているのだ。
「そう……ふーん」
不満そうな声をあげる母上。てっきり領主代行になる事を喜んでいたと思っていたが。
「ヴィオラちゃんのかっこいい所見たかったのに」
母上の言葉に何と反応していいか迷う。かっこいい所って。領主の仕事はそういう浮ついたものでは。そこまで考えて、自分の目的を思い出す。処刑回避もそうだが、どれだけ贅沢しても傾かない領地を作るのが目的。浮ついていたw
「あっ、そうよ」
返答に迷っていると、母上が何か思いついたように声をあげ続けた。
「アリード、ミスしても怒らないから、大丈夫よ、くふふw」
ニッコリと笑顔を浮かべた母上。それはミスをしろと言う意味だろうか。ちょっとお仕置きが必要かもしれない。
「そういえば母上?」
「なぁに?」
私は最上級の笑顔を顔に貼り付けて言葉を続ける。
「以前より痩せられたようですが、皆の前に立つ者として、皆に命じる立場として、まだまだお体がだらしないですわね」




