小学校天才ピアニスト編⑤
水族館の後はアヤカの家で、水族館で得た感情を、ピアノで表現する練習だ。
「ユウト、どうやってピアノで水族館で得た感情を表現するつもりだ。」
「水族館で得た感情をピアノで表現する練習」とか、正直自分でも意味不明だと思っている。完全に3人で遊びに行くための口実だったからだ。
なんとかそれっぽく誤魔化すしかない。
俺は堂々と適当なことをいうことにした。
「例えば、今日見たイルカショーのジャンプを音楽にしてみようか。」
「〜♫」
「どうかな?イルカが水中にいる時はゆっくりとした静かなメロディ。そして水面に出る直前はスピードをあげて、一気にジャンプをする時に最も力強いメロディにしてみたんだけど…」
「たしかに、言われてみればそんな感じもするね!」
「これは動作を音楽にしただけなんだけど…感情も同じようにできるはずだよ。アヤカ、例えばだけど、水族館に行く前はどんな感情だった?」
「え?えっと、私は楽しみだったよ。ドキドキもしてたかな…?」
「じゃあ、初めはドキドキしたメロディを弾けるかな?」
「こ、こうかな?」
「うん!いい感じ!ドキドキしつつ、楽しみな感じのメロディになっているよ!これは表情力に直結するよね。じゃあ次はマコト水族館に向かう時はどんな感情だった?」
「楽しみ半分、不安半分っていうところだろうか…」
「なんで不安…まあいいや、それをメロディにしてみてよ。その時の感情を思い出しながらね。」
「こんな感じか…?」
「うん。凄くいい。不安なメロディと楽しそうなメロディが交互にきているね。」
「しかし、これができて何になるっていんだ?」
「マコトの疑問もわかるけど、作曲者は当時の状況や感情を譜面に残していることが多いだろう?今回の課題曲も作曲者の感情が強く表現されている。」
「たしか、この作曲者はこの曲を最後に亡くなっちゃったんだよね。」
「そう。序盤は妻と平和な暮らしをしていた穏やかな曲調。でもその後は、突然激しい曲調に変わる。これは突然の妻の事故死と自分の病気による余命宣告による、この時の感情の乱れを曲に表していると言われている。そして最後にまた穏やかな曲調に戻る理由は、諸説あるんだけど…マコトはなぜだと思う?」
「死を受け入れて、気持ちが落ち着いたとか?」
「そう。それも正解かもしれない。答えはないからね。他にも死後の世界で妻とまた穏やかな暮らしを想像して譜面にしたという説もある。どう感じるかは人それぞれだけど、その情景をイメージして弾くことが俺たちのレベルだと必要だと思うんだ。」
「そっか!だからユウトは最後の穏やか曲調のところは、よりゆっくりと静かな雰囲気になっていたんだね。死後の世界だから現実よりも時間の流れが遅いのかな?」
「そうだね。俺は演奏者が情景を見せつけられると良いと思っているんだ。じゃあ、アヤカもマコトも色々試してみようか!」
なんとか、その日の練習を無事終えることができた。
アヤカもマコトも意外とこの練習に満足したようで、感情表現が上達した気がするとのとこだった。
ピアノの実力がある俺が言えば、なんでも信じてやってくれるんだなと思った。
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