ブサイクな人生
「もう少しユウトの見た目がよければな」
寝室。両親の会話を今でも覚えている。
俺が眠ったと思い込んでいる時に、俺の容姿ことで悩んでの発言だろう。
無償の愛を捧げてくれた両親。
俺はだからこそ両親のこの言葉を覚えているし、傷ついたんだ。
俺の見た目のせいで離婚の危機に2度もあった。
1度目は父が自分の子供ではないのではないかと疑い遺伝子検査をした時だ。
父母共に見た目が良いのに、俺のようなブサイクが産まれるわけがない。
2度目は父が母の整形を疑ったことだ。
繰り返しとはなるが、父母共に見た目が良いのに、俺のようなブサイクが産まれるわけがない。
このように父に疑われてしまったが、それも仕方ないことだ。
父・母・2つ年下の妹は全員が容姿端麗。
父は代々続く大企業経営者の息子でお金持ち。
息子ガチャの大外れとはこのことだろう。
しかし、両親には感謝をしている。
こんな見た目の息子でも、裕福な暮らしをさせてもらい、しっかりと教育にもお金をかけてくれた。
父も俺の見た目のせいで疑いはしたが、完全に自分の息子だと理解したからか、真剣に俺と向き合ってくれた。
俺も一浪はしたが、東京大学に入学•卒業できたのは両親へのせめてもの恩返しになったと考えている。
東京大学に入学するまでの道のりは本当に大変だった。
大変だったのは勉強ではない。人関関係、簡単にいうといじめだ。
俺は壮絶ないじめを経験した。いじめがなければ一浪することなんてなかっただろう。
小学生の時はまだマシだった。
無視される。仲間外れにされる。悪口を言われる程度だ。「うわ。触られた。ユウト菌がうつる」とかバイ菌扱いをされたりと、とにかく気持ち悪く思われているだけだった。
友達なんていなかった。そういえば、俺が小学6年生になった時には妹からも全く話しかけられなくなっていた。
一人で寂しい思いはしたが、今思うとあの時は比較的マシだった。友達がいない俺は逆に勉強に集中できたし、クラスではいつもトップの成績だった。
中学生からは本格的にいじめられた。
暴力。パシリ。かつあげ。持ち物の破壊。いじめとして思いつくことは全部された。うんこだって食わされた。
全身にはアザができて、お小遣いは全て取られた。教材は何度も買い直してもらった。
先生も理解していた筈だ。「ああ、見た目が悪いからいじめられたんだな」と。
真冬に校内で全裸にさせられて、全裸にさせられた俺の方が停学をくらったこともある。
もちろん脱がされたんだ。先生もわかっているのに、知らないふりをして変態扱いをされて俺が停学だ。
唯一、両親だけは俺の味方をしてくれた。環境を変えるために数度の転校をさせてくれた。様々な人種が集まるアメリカへの留学も手配してくれた。
しかし、アメリカでもダメだった。1年ほどは粘ったのだが、やはりいじめられて帰ってきた。恥ずかしい限りだ。唯一アメリカ留学のために死ぬ気で英語を勉強したために英語力だけは得られた。この留学経験は今では両親に感謝をしている。
日本に戻ってきてとりあえず入った中学校では、たまたま良いクラスを引き当てて暴力やパシリはなかった。このため、この中学で勉強にも集中して卒業することができた。
高校に入ってからのイジメはさらにひどくなった。特に高校のイジメの主犯格は体格や運動能力だけでなく家柄や頭脳まであらゆる面で俺より優れていた。俺は背も低く勝てるはずがなかった。全てが中学のひどい版だ。暴力もより痛かったし、カツアゲの金額もエスカレートしていた。母に小遣いをねだると何も言わずにくれた。きっと用途は理解していたんだろう。
一輪の花が刺してある花瓶が3つも俺の机に飾られていたことがある。金曜日放映されたドラマの影響で自分もユウトにやってやろうと考えた奴が3人もいたということだ。この時はクラス中が笑っていた。俺からしたら直接的な痛みがないのでご苦労様くらいに思っていたが。
2年まで頑張って通ったのだが、俺はもう満身創痍だった。次第に休みがちになり、2年まで通って自主退学した。
そこからは親に勧められて大検を受けて大学を目指すことになった。実質一浪する形にはなったが、勉強に集中することができて東京大学に合格することができた。
東京大学では、いじめやパシリのようなことはなく、研究会に参加することもできた。
大学入ってから、父に声をかけられた。「ユウト。本当はお前に会社を継がせてやりたいが、トップに立つ者はついていきたいと思われるには見た目もとても重要になってくる。お前自身のためにも、お前を会社を継がせるわけにはいかない。ただ一緒に働くことはできる。お前は頭良い。きっと会社でも活躍できるだろう。もしよければ父さんの会社で働くか?」
俺は断った。実は東大に入ったのは父に会社を継ぐ息子として期待されていると思い込んでいたからだった。
でも父は俺に期待なんかしていなかった。俺のためを思って、俺の容姿が悪いから、継がない方が良いと考えていたのだ。今更ながらも、ショックだった。
昔取った杵柄で英語を話すことができた俺は、大学を卒業してからインドに旅をした。
ヒンドゥー教の教えには輪廻転生がある。肉体は滅びるが魂は永遠不滅であり、魂は服を着替えるように肉体を変えていくらしい。
俺は命懸けで輪廻転生をしたいと願った。人並みの幸せを経験してみたかったから。だからインドに来たんだ。
ガンジス川の近くで、俺はついに輪廻転生をさせることができる神と呼ばれる男性に出会った。
俺は全ての事情を話した、男は深く同情をしてくれた。
「あなたは苦しい思いをしながらも悪いことはせずに、この歳まで精一杯生きてきた。生まれ変わったら容姿にも才能にも優れた人になれるだろう。これはとても特殊な粉だ。時をかけて、同じ人生を違う素養を持ってやり直せるだろう。」俺は言われるがままに謎の粉を飲み、意識を失った。
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