どうか、何卒
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
ちなみに、心臓握り潰すのは、心臓に痛みを抱えると、必ず人間は頭を下げるから。
近付く程に香しく。酩酊を誘う様に気が惑い。香が漂う社からは、広葉樹の多肉な葉がもっさりの漏れ出していた。囲うように歩くと石造りの鳥居がある。
此処を訪れるのは、久方振りだった。参らなかった理由は、心臓破りの坂があるだとか、薄暗いトンネルを抜けなければならないとか、言い訳を出せば五万とある。けれども平たく上げるならば、乗り気では無かったのだ。気が向かないという事は、此処の御祭神が私をお呼びにならなかった事にほかならない。
今日は呼ばれた気がした。齢一桁の少年が夢に出て来た事や、その目が傲岸不遜であった事、その方の御姿が削り出されて来た事、それら全てが奔放なあの方の呼び鈴に思えた。
――お呼びに戴き、誠に有難う存じます。
鳥居を潜る前に一礼を行うと、密度の濃い風が頬を撫でる。呼吸の出来る水が境内から溢れ出た様だった。ここから先は、現世と異なる異界の土地。それは一歩踏み入れた時からも明らかだ。
ただ神気に酔い知れて、手を清める。ずっとずっと、語りかける。
――御姿を、お見せ下さいませ。これは私の傲慢である事は百も承知で御座います。ですが……延々と勘違い甚だしいままに、貴方様の御姿を想像したくは……ないのです。
けれども節をずらして手を合わせた時、空間を切り裂く様な警笛が聞こえた。それは私の考え、意志を掻き乱し、瞬きの無を創造した。
私は沈黙のままに、頭を垂れる。やはり傲慢である事に違いはないのだ。故に、私の願い事はもう終い。偶にこうして呼ばれるくらいが、許された特権なのだ。
その後は、何一つ考えず、間近の鳥居に向かって歩み出す。呼ばれて良かった。思っていた以上に、精神が満たされ高揚する。それで良い。
そうして社を後にようとした時だった。社を満たしていた空気が循環し、多肉な葉がカサカサと音を奏でる。それは草むらを何かが蛇行する音と似通っていて……。
――あぁ……其方に。
オマケ
ずっと、ずっと、あの方を連想する様なものばかりが目に入る。一筋の閃光と共に空を裂いて、私の元に舞い落ちる。
「天狗、というのは大元辿れば流星の様で。お久しゅう御座います。耐冬花様」
神様らしい神様って言ったら、私が存じ上げるのはただ一柱。
他の方々は確かに神様らしいところもあるんですけど、人間味もちゃんと残っている感じ。
自分の感情をフルで優先させる前に、とりあえず話は聞いて下さる感じ。
敬わないと祟るし、敬わなくても祟る。
気に入らなかったら、気に入る行動を強制させる。
全て自らの気分次第。でも感情は希薄。
違和感を覚えたら、それを直そうとする反射行動に近い感じ。
それが神様らしい神様かと。
今日はお加減宜しい様で。
香りから違う。社入っても違う。存在を尽く表しなる。
そんな日でした。
一つ入れたかった描写があります。
満更でもない顔で、「一人遊びとは関心しないな」です。
この子は神様が見えない設定なんで、声も聞こえてません。
おまけの話は書きたかった別の話。
流れ星の様に舞い落ちる様は、やっぱり天狗様だと思います。