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まぜもの妖談 ~狼天狗と雪女~  作者: 仲山凜太郎
11/33

【11・意味不明の不穏】


「休み?!」

 思わずあげた高尾の叫びに、目の前の女生徒達が逃げるように後ずさった。

「どういうことだ。昨日あれだけ言って休みってのは」

「あたしに聞いたって知らないです」

「先輩が怖いのが原因でしょう」

 そろって机に隠れながら2人の女生徒が答える。

 白無垢学園。瑞雪のクラスである。鞍馬の忠告もあり、昨夜は彼女の家まで押しかけたいのを我慢して今朝まで待ったのだ。

 そして朝一番に彼女のクラスに来た結果が「瑞雪は今日休み」である。

「ざけんじゃねえぞ、あの女。どうしてくれよう」

 両手をわきわきさせながら含み笑う高尾。そのまま教室を出て行こうとすると

「やっぱりここでしたか」

 明子を連れた鞍馬と出会った。

「部長、瑞雪が逃げた」

「人聞きの悪いことを。熱が出たから休むと連絡がありました」

「俺にはねえ」

「頭に手を当ててよく考えてみなさい。彼女が君に連絡しなかったわけがわかるでしょう」

 言われたとおり、高尾は頭に手を当てて考えたがわからなかった。それを言うと

「彼女については私が放課後に家に寄って話を聞きます」

「俺は仲間はずれですか。空手部員が四人死んだんですよ。新聞部総出で事に当たった方が」

 朝、新聞やネットニュースを一通り調べた彼だが、昨夜の一件はどこにも出ていなかった。まだ学園が事件と認めていないのか。もっとも、昨夜の情報だけでは書く方だって困るだろう。

「それなんですけど、君が昨日見た氷漬けの部員というのは誰のことですか」

「誰って、空手部員で岩麻の取り巻き。大会のレギュラー。起承転結四天王」

「全員います」

「へ?」

 高尾はまぬけな声を上げた。

「だから、空手部員は今日、全員登校して朝練に出ています。透野さんが確認しました」

 もう一度、高尾はまぬけな声を出した。


 壊れた扉の陰からそっと中をのぞいてみると、

「どうなってんだ?」

 高尾は目の前の光景が信じられなかった。

 朝練を終え、道場の中央で岩麻と一緒に下級生から礼を受けているのは間違いなく、昨日岩麻と一緒にいた連中であり、氷漬けになっていた部員、起承転結四天王だ。

 それが何事もなかったかのように登校し、部活をしている。あえて昨日と違う点を探すとすれば、昨日あったギスギスした感じがなくなっていることだ。それどころか目は出来の悪い人形のようにふらついている。部員達も様子がおかしいのには気がついているが、怖いのか誰もそれを指摘しない。

「わかんねえな。昨日のあれは何だったんだ」

 一気に力が抜けてへたり込んだ。

 夢のはずはなかった。地面は凍っていたし、瑞雪の携帯も凍って落ちていた。これは高尾だけではなく、鞍馬や学園の警備員も確認している。

「直接岩麻先輩たちに聞く……って、答えてくれるわけねえか」

 頭をかきむしると、高尾は新聞部備品のタブレットを取り出した。ディスプレイには昨夜透野たちが作った赤毛の女生徒候補リストが表示されている。こうなったら、何としてでも昨日、岩麻たちに襲われた子の女生徒を探し出すしかない。

「まさか、この子も何事もなく普通に生活していた。なんてことはねえよな」

 その日、休み時間と放課後を使って高尾は校内を駆け回り、それらしき女生徒に会っては話を聞こうとした。

 いくら白無垢学園の生徒数が多いと言っても、赤毛の女生徒の数は限られている。それに、岩麻たちのようなむさい男ではなく女生徒だ。高尾の気分の乗りもだいぶ違う。場合によって襲われて傷心の彼女を優しくしてあわよくばそのまま。なんて都合の良いこともちょっと考えていた。

 ところが、肝心の赤毛の女性が見つからない。髪を染めていたのを止めたとしても、鞍馬の言うとおり見たときに感じたイメージは大きいし、面と向かえばこの人だとピンとくるだろう。なんて気楽に構えていた高尾だが、こんな時、彼の悪評が災いする。訪ねていった途端、みんな警戒心丸出しで、中には逃げ出すのまでいた。

 さすがの高尾も20人を超える辺りでうんざりしてきた。

「どうなってんだ」

 今日、2度目の台詞を口にした。

「可能性としては、瑞雪同様今日休んでいるか」

 しかし、会いにいった女生徒はみんな登校していた。こうなったら、やはり瑞雪に会って話を聞くしかない。彼女の家の電話にかけてみたが、呼び出し音が鳴るばかりで誰も出ない。

 鞍馬に同行しようと思ったが、放課後、部室に顔を出した時点ですでに彼はいなかった。

「しゃあない。1人で行くか」

 住所はすでに調べてある。瑞雪の家は鴨葱駅を超えた住宅街にある一軒家だ。学園からは歩いて30分以上かかる場所で、初めて高尾は彼女が自転車通学をしていることを知った。ちなみに彼は徒歩の通学である。


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