迷宮の呪装士
光源は見当たらず、されど薄明かりに染まり大凡の視界には困らない石造りの通路を進む。石壁は僅かに覗くばかりで、そのほとんどは蔓蔦に覆われていた。
ここは未踏破迷宮『華王の古城』。
俺は、あの華麗なる復讐と脱出劇の後、冒険者となった。ダーインスレイヴとベルセルクは本当に優秀で困ったことは全くない。
通路を抜けて小部屋に出る。
そこにいたのは三匹の魔物。枝葉が小柄な猿のようなカタチをした緑魔種、枝魔芽インプだ。
声帯はないので、ガサガサと枝葉の擦れ合う音だけを響かせながら、インプたちは襲いくる。しかし、彼らは最低位の魔物だ。ベルセルクによって全能力を向上させている俺からすれば欠伸が出るほど遅いのである。
ダーインスレイヴを一閃。たったそれだけで、三匹のインプは干からびて枯れてしまった。
この迷宮は、その名の通りに緑魔種の魔物が豊富な迷宮である。それでも全く問題はない。ダーインスレイヴが啜る血液とは、生物の体液のことであるからだ。
ダーインスレイヴの相性が悪いのは、鉱魔種や屍霊種なんかである。
さらに進もう。
奥へ奥へと、戦うほどに回復するので、休まずに進めば情景が様変わりした。
庭園である。薔薇園というのか。不気味なほどに真っ赤な薔薇が咲き誇り、よく見るあり様としては噴水が設置されていそうな中心にそれはいた。
【ローズクイーン・アルルーナ】
【種族:緑魔種 闘級:B】
【妖華アルラウネの中でも攻撃的な性格の個体が到達する上位種。薔薇のように真っ赤な花弁は優美にして豪奢なドレスのごとくある。棘の生えた蔓蔦を触手のように自在に動かして獲物を捕らえる能動的な喰獣植物。】
艶然と微笑みその妖女に、しかし、俺は容赦しない。
突撃。迎撃に動く蔓蔦はダーインスレイヴに切り開き、大上段で本体を切り裂いた。
妖華アルラウネは催淫作用のある香りを放つが、魔物が用いる搦手の多くは呪いである。そして、呪いは俺には効かないのだ。
迷宮が、ローズクイーン・アルルーナの死体を魔力に分解する。後に残ったのは、茨で編まれたような冠だった。
【薔薇の罪架ローゼンクロイツ】
【魔法力:S スキル:精霊魔法 カース:魅惑】
【かつて人間に恋慕した薔薇の精の情念が宿る呪われた華冠。恋の病を治すのは愛の薬だけだとされるが、愛こそが最も強力な呪いともされている。】
よく分からん。この華冠に操られる呪いか?
まぁ、何にしろ俺には効かないので、装備だ。
これで魔法を使えるようになったんだ。やっぱり、魔法が使えないとダメだよな、ファンタジーなんだから。
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