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礼拝室での一幕

~エールラフィン山・神殿・礼拝室~


「特に有用な情報はなかったな……」


言いながら、田中は図書室を出る。

すると、礼拝室で一組の男女が殴り合いの大げんかをしていた。

女の方は三日月日向。龍田と田中の同期生で、ギャルである。

男の方は古賀湊斗。山岳医で、空気が読めない。


「これはいったい?」


近くにいた龍田にそう聞くと、彼女はため息をつきながら言った。


「いや、古賀さんが日向ちゃんの足を踏んじゃいまして。

その仕返しに、日向ちゃんが古賀さんを殴ったら……こんなことに」

「短気すぎて草」

「まぁ、三日月君は中学時代から短気だったからなぁ」


いつの間にか、田中の隣に来ていた香川がそう言った。

彼は中学校時代、三日月と付き合っていたらしい。

もっとも、三日月はそのことを忘れているが。


「いつの間にそこに?」

「今の間に。しかし、本当にひどい喧嘩だなぁ。これ……

たしか、古賀は元ラグビー部で、三日月は元柔道部だったはず。

そんな二人の喧嘩だし、仕方がないか」


香川がそう説明しているうちにも、喧嘩はヒートアップしている。


「止めた方がいいかな」

「止めた方がいいですけど……あれ、止めれます?」

「……無理だね」


その時「ゔっ」という、三日月の変な声が響いた。

見ると、古賀の足が三日月の股を思いっきり蹴り上げている。

それこそ、三日月の体が浮かび上がるほどの力で。


「だ、大丈夫!?」


龍田が駆け寄ると、三日月は股間を抑えて悶絶している。

痛みのせいか、龍田の声にこたえることもできない。


「おい古賀! ここまでやらなくてもいいだろ!」


香川が叫ぶが、古賀はそれに反論する。


「いや、ここまでするつもりはなかっ……いやあったかもしれん」

「おい」

「でも、五回くらい金的されてるし、おあいこだと思うんやけど」

「え、これマジ?」


香川と一緒に古賀を糾弾しようとしていた田中が、そう言って三日月の方を見る。

三日月の背中をさすっていた龍田が、その視線に気が付いていった。


「ああ、それは本当ですよ。五回……いや、六回くらい蹴られてましたかね」

「よくそれで立ってられんな、この人」


龍田の話を聞き、そうつぶやきながら古賀を見る。

古賀はそのつぶやきに対してこう答えた。


「まぁ、蹴られ慣れてるからなぁ」

「蹴られ慣れてるってどういうこと……?」

「夫婦喧嘩でよく蹴られてるんよ」

「マジかよ」


一方、三日月は痛みは落ち着いてきたのか、龍田の手から離れて立ち上がる。

ただ、足はガクガクしていた。無理もないだろう。


「みんな……あいつ、ぶっ殺していい……?」

「日向、落ち着け」

「健ちゃん、止めないで。あいつは殺さなきゃいけない」

「落ち着けって」


三日月は、足をガクガクさせながらも古賀の方へ近づいていく。

すると、龍田が突然こんなことを言い出した。


「KP、精神分析振ります」

「え、なに急に。……では、1d100でどうぞ」


そう田中が言った直後、龍田は言う。


「98、ファンブル!」


腕を思いきり振りかぶり、三日月を殴り飛ばした。


「うわっ!?」


彼女はそのまま壁に激突。

それを見た田中が、三日月に向かって言う。


「……では、1d3でダメージ量を決めてください」

「いや振らないよ? 何勝手にリアルTRPG始めてんの?」

「ごめんごめん。龍田が急に精神分析振るとか言ってきたから、乗っちゃった」

「はぁ……まぁいいや。梨花ちゃんも、急に殴ってこないでよ」

「すいません。日向ちゃんには、説得より精神分析(物理)が効くと思いまして」


龍田、三日月、田中の三人は、大学時代によくTRPGをしていた。

その時のノリで、今もついつい行動してしまうのである。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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