フェラサ要塞
ラトッサー争奪戦から数日。
水は引く様子を見せず、ラトッサーの街はいまだ海に沈んでいた。
調査の結果、ラトッサー周辺が地盤沈下を起こし、海へ沈み込んでいたことが発覚。
大津波も、この地盤沈下により発生したものではないかといわれている。
日本政府はこれを受け、ラトッサーの新たな海岸線に湾岸施設を整備。
護衛艦や輸送艦の寄港地とした。
***
~ラトッサー仮設乾ドッグ~
護衛艦の中でも被害が大きく、機関自体が動かなくなっていた「しなの」は、
ラトッサーに新しく作られたドッグで修理を受けていた。
「機関や電子機器、武装もほぼ総取替だそうです」
「そうか。まぁ、海に沈んだしなぁ……」
***
~21番街道~
ラトッサーと首都ダレストを結ぶ街道を、
陸自部隊は進んでいく。
極東文明圏国家とは違い、きちんと舗装されているので、
多少揺れはするが、陸自の車両でも難なく走れる。
「このまま道なりに行くと、フェラサ要塞です」
「要塞?」
「はい。この世界でも旧式化し始めている要塞ですから、
要塞そのものが完全に形骸化した現代の兵器なら、容易に落とせるでしょう」
「確かに、技術的には俺らの方が上や。でも、油断は禁物やで」
「わかってますよ。油断せずに行きましょう」
「ああ。……よっしゃ、この丘に布陣しよう」
「了解」
***
~フェラサ要塞・指令室~
「サロッタ中将は――もう逃げてますか」
ラトッサーから退避してきたレトナ少将は、要塞の指令室を見ながらそうつぶやいた。
部屋は荒れており、夜逃げでもしたように見える。
おそらく、ラトッサー放棄の連絡を受け、わが身可愛さで逃げ出したのだろう。
「はぁ……」
彼女はため息をつきながら放送設備の電源を入れ、こういった。
「あー、あー、私はラトッサー市防衛隊、レトナ・タートリッジである。
フェラサ要塞の指揮権を持つサロッタ・ショー中将が逃ぼ……もとい戦死したため、
私が一時的に指揮を執る。以上!」
ダレスト人民共和国の軍法では、
有事の逃亡はほぼ例外なく死刑と決まっており、
逃亡者の家族として虐げられるのを防ぐため、
その家族には戦死として伝えられる。
「まぁ、こんな旧式要塞で敵を倒せるとは思っていませんがね」
放送設備の電源を切ると、レトナ少将はそうつぶやいた。
フェラサ要塞は、過去にも何度か敵の侵攻を受けたことがあるが、
そのことごとくを退けてきた歴戦の要塞である。
だが、この要塞はまだ高度文明圏が剣と盾で戦っていたころに作られた物。
幾度となく改装が行われてはいるが、やはり力不足である。
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