災害一日目 朝 地上の街
~神水市・紅葉交差点~
しばらく避難路を歩くと、公園のある交差点に到達。
久しぶりに見た青空に、成美は安堵の息を吐く。
しかし、改めて周りを見てみると、街は見るも無残な姿になっていた。
建物の窓ガラスは割れ、電柱や街灯は倒れている物もある。
道路もボロボロで、歩きにくい。
「……とりあえず、家に帰ってみよう」
中心部にある自宅を目指し、ボロボロの街を歩き始めた。
交差点に隣接する浅沙公園には、
『一時避難所』の看板が取り付けられており多くの人が集まっている。
ほとんどの人が怪我をしているが、止血程度しか対処が行われていない。
(本当にひどい有様だ)
そう思いながら、歩く。
震災前なら、この道を真っすぐ行けば自宅まですぐに着くのだが、
「うーん……これは無理かなぁ」
倒壊したビルが、道をふさいでいる。
近くに『神水石油』と書かれたタンクローリーが横転しているし、
あまり近づかないほうがいいだろう。
そう考え、成美は道を変えた。
遠回りにはなるが、この道でも自宅に向かえる。
***
~神水市・君葉通り~
「危険です! 近づかないでください!」
「こんなの、めったに撮れないぞ……」
「下がってください! 火傷しますよ!?」
「凄いなぁ……めっちゃ燃えてる……」
「下がれって! 死にたいのか!」
警官が、そう叫んだ。
彼の後ろでは、大きなビルが燃え盛っている。
消防士が一所懸命消火作業を行っているが、炎の勢いは収まる様子がない。
その様子を写真に収めようと、多くの人がスマホを掲げている。
「写真を撮らないでください! 下がって、ほら!」
その時、燃えているビルの一部が崩落。
駐車場の乗用車を押しつぶした。
「やった! 崩落直後の写真取れた!」
「そんなのどうでもいいから下がれって! 危ないっつてんだろ!」
成美は、その様子を横目に進む。
確かに写真を撮りたくなるほどの火災だが、先を急いでいるので何もしない。
スマホの充電も貴重だしね。
そう考えながら、彼女は歩いた。
***
~神水市・つばき大通り~
「ここは……被害が少なそう」
成美は、人が多く歩いている大通りに到達した。
そこには高層ビルが立ち並び、高速道路の高架が通っている。
「……」
ビルの壁に手をつきながら、彼女は歩く。
昔、高架が倒れている写真を見たため、すこし怖いのである。
「確か、この道を真っすぐ行けば中央駅だったはず……きゃっ!」
地面が大きく揺れ、しりもちをついてしまう。
「余震……!?」
揺れはどんどん大きくなり、高速の高架がゆらりゆらりと揺れている。
直後、高架の柱が崩壊。こちら側に倒れてきた。
「に、にげなきゃ……」
立ち上がれない。腰が抜けてしまったのだ。
高速道路が彼女の目の前に倒れこみ、轟音が響く。
アスファルトの破片が飛び散り、頬をかすめた。
「あ……」
成美は、股間のあたりが温かくなっていくのを感じる。
(漏らしちゃった……)
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