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災害発生直後 冬水ラグーンライン

~宮葉県・冬水ラグーンライン・高速バス車内~


『ちょっとお姉ちゃん、聞いてるの!?』

「ん……ああ、聞いてるよ」


海底トンネル、冬水ラグーンライン。

そこを走る高速バスの車内に、一人の女性が座っていた。

TシャツにGジャン、下はデニムハーフパンツというラフな出で立ち。

髪は茶に染めており、サイドテールにまとめてある。

赤いキャップをかぶっており、歳は20代前半というところか。

スマートフォンを耳に当て、誰かと通話している彼女の名前は二階堂成美。

神水市内で探偵業を営んでいる。


『もー! なんでお父さんとお母さんを説得してくれないのさ! 私、絶対許さないよ!』

「……別に説得なんかしなくてもいいんじゃない?」

『は!?』


通話相手は、妹の二階堂あゆみ。

彼氏と結婚したがっているが、両親に結婚を反対され続け、

両親を説得してくれないかと、他の姉妹に電話をかけ続けている。


「お母さんもお父さんも、

あゆみが結婚なんてまだ早いって言ってるだけだって……。

18歳になったばっかりでしょ?」

『うるっさい! とにかく、説得してよ!』

「でもなぁ……私、忙しいし」

『お姉ちゃんは探偵の真似事してるだけでしょ!

毎日毎日お金貸してあげてるんだから、たまには私の役に立ってよ!』

「まぁ電話はしてみるけどさぁ。でも、あんまり期待しない方がいいよ?」

『とにかく、電話してね! じゃ!」


あゆみは一方的に電話を切った。

スマートフォンをしまい、背もたれによりかかる。

目をつぶって、考え事を始めた。


「……」


眠くなってきた頃、ポケットのスマホからけたたましい警報が鳴り響いた。

驚いて飛び起き、スマホを取り出す。

スマホから、このような音声ガイダンスが聞こえてきた。


『地震です。地震です。地震です』


数秒後、地面が大きく揺れる。

バスは蛇行を繰り返し、同じようにトンネルを走っていた乗用車に衝突。

世界が傾き、ガラスが割れる音と金属音が響いた。


***


「う……」


成美は、目を開く。

どこからか、水の流れ込む音が聞こえた。

体に、何か重いものがのしかかっていて、動けない。

全身が痛むが、何とかはいずり出る。

社外に出ると、バスが横転した状態でトンネルの壁に突き刺さっており、海水が流れ込んできていた。


「……」


トンネルの非常灯が、彼女を照らす。

彼女の体は、生傷だらけになっていた。


「……とにかく、行かなきゃ」


そうつぶやき、出口まで歩き始める。

トンネル内はめちゃくちゃになっており、多数の車両が事故を起こしていた。


『……県で、巨大地震が発生しました。神水市では震度7を記録……市では、震度……』


乗り捨てられた乗用車のカーラジオから、ニュースが聞こえてくる。

彼女は、立ち止まってそれを聞くことにした。

緊急時は信用できる情報が大切である。


『この地震による津波の心配はありませ……細心の注……避難してください

自動車は使用しない……さい。徒歩、もしくは自転車……ください。

自動……原則、鍵を開け、自動車のカギを置いた……避難して……さい』

「津波は来ない……よかった」


成美は安心したようにつぶやく。

しかし、ここが海に沈むのも、時間の問題だろう。


「……そうだ、携帯。いつもならトンネル内でも使えるはずだけど」


彼女は携帯を取り出して、画面を見る。

しかし、電波は届いていないようだ。


「だめか……」


携帯をポケットにしまい、歩き出した。


***

~冬水ラグーンライン・佐上田サービスエリア・上り線側~

しばらく歩くと、佐上田(さうえだ)サービスエリアが見えてきた。

地震の影響か、建物の一部が崩れている。


「誰かいませんかー?」


成美は大声で叫ぶが、返事はない。

とりあえず、彼女はサービスエリア内へと入った。

店内では商品棚が倒れており、食料品などが散乱している。

このサービスエリアには、緊急用の避難階段があるはずだが……


「階段は……あれか」


非常口と書かれた扉を発見し、成美は近づいていく。

扉を開くと、鉄製の階段が続いていた。


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