港町ツルァ
~教国西部・港町ツルァ~
ツルァは教国の西に位置する港町である。
高度文明圏国家のあるニスト大陸と、
教国やアルケテル王国の位置するユトラ大陸を繋げる、玄関口の一つだ。
「領主様。高度文明圏国家からの輸入品が、すべて届きました」
「うむ」
この港町の領主は、教国の貴族だ。
教国の貴族は、ほとんどが教国政府に協力することと引き換えに爵位を得た者ばかりだ。
そのため、貴族の全てが政府の犬といってよい。
「品目と、量を教えてくれ」
「はい。まず、中央帝国から10cm湾岸砲が3門。
王国からはニトレア酒が5樽で、大帝国からは生活雑貨が20トンです」
「そうか。下がっていいぞ」
「失礼します」
部下は一礼して部屋から出て行った。
「ふぅ……あ、もうこんな時間か」
ツルァの領主であるエルドンは、椅子に座り込む。
そして、時計を見るとそう言った。
彼は貴族の家系に生まれ、現在は港町ツルァの領主をしている。
高度文明圏からの物品を管理しており、いつも忙しいのだ。
教国では人々に格付けがなされており、それにより国家を成り立たせている。
まず、一番数が多い五等臣民。
人権が与えられていない、俗にいう奴隷である。
これらの人々が反乱を犯したら教国はあっという間に滅ぶため、
家族などが人質としてとらえられている。
次に数が多いのは、四等臣民。
日本の江戸時代でいう百姓のような人々が、この階級にあたる。
基本的人権を保障され、あるていど自由に暮らすことを許されている。
しかし職業選択の自由はなく、教国政府が決めた仕事につくことになる。
ここら辺から数が少なくなっていき、三等臣民。
日本の江戸時代でいう町人や商人にあたる。
三等と同じく基本的人権を保障されており、自由に暮らすことも許されている。
職業選択の自由もあり、自分で商売をすることも出来る。
そして、二等臣民。
いわゆる、上流階級の人々だ。
多くの税金を納めている人々がこの階級になり、選挙権が与えられる。
軍人などもこれに当てはまる。
最後は一等臣民。
貴族などがあてはめられる。
エルドンも、この階級だ。
「さてと、帰ろうか」
***
エルドンはこの世界では珍しい、奴隷反対派の貴族である。
だが、たった一人の辺境貴族に国家の仕組みを変えることはできないため、
できるだけ多くの奴隷を雇うことで、他よりもいい環境で暮らせるようにしている。
「おかえりなさいませ。旦那様」
向かえに出たのは、メイド服を着た女性。
彼女も奴隷だが、この家では普通の人と同じように扱われている。
その時、彼女の後ろから小学生くらいの女の子が走り寄ってきた。
「お父さん、お帰り!」
「おお、ただいま」
この少女は、エルドンの娘だ。名前はニーナ。
魔法学園中等部1年生であり、今年で12歳になる。
「そうだ!明日、買い物に行こうよ!」
「ああいいぞ」
「やったー!」
ニーナは嬉しそうに飛び跳ねる。
「じゃあ、私は宿題してくるね」
「おう」
ニーナは、自分の部屋に駆け込んでいった。
***
~港町ツルァ・市場~
翌日。エルドンは、ニーナとともに市場へやってきていた。
市場は、貴族用の第一層、一般用の第二層、
日本でいう闇市である第三層と別れており、二人は貴族用の第一層にやってきていた。
「いい天気だね~」
「そうだな」
二人が従者の一人を引き連れて歩いていると、
路地からフードに身を包んだ怪しい人物が出てきた。
その人物は三人に近づいてくると、エルドンに向かって呟く。
「今夜、サラエア山のミナユラ谷に来てください」
「何?」
エルドンが聞き返す前に、フードの人物は立ち去ってしまった。
「どうしたの?お父さん」
「いや、何でもない」
エルドンは、そう言って歩き出した。
従者も、フードの人物に気が付いていないようだ。
――あいつは、俺にしか見えていないのか……?
エルドンは、心の中でそうつぶやく。
そして、
――今夜、サラエア山に行ってみよう。
そう決意した。
「ねえ、お父さん!早く行こっ!」
「分かった分かった」
***
~サラエア山・ミナユラ谷~
サラエア山は、港町ツルァの北に位置する山だ。
多数の魔鉱石が埋まっており、魔力の森が生い茂っている。
ミナユラ谷は、サラエア山中に位置する谷である。
サラエア山の中でも魔力の濃い場所であり、
熟練の魔術師であっても魔法を行使することは難しくなっている場所だ。
「来たぞ。お前は何者なんだ」
エルドンがそう言うと、フードを被った人物が振り返った。
しっかり見ても、フードのせいで顔は見えない。
「私は、高田と申します」
男とも女とも取れる声だった。
「あなたには、我々の計画に協力してほしいのです」
「協力だと?」
「はい。あなたは、奴隷反対派だと伺っています。我々に協力してください」
「それは……」
「あなたにもメリットはあると思いますよ」
「……わかった。話を聞こう」
「ありがとうございます」
高田は深く頭を下げた。
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