高度文明圏では……
~ニトレア王国・湾岸都市エイコス~
「点火!」
その号令と共に、岸壁に取り付けられた湾岸砲が吹き飛んだ。
ここは、大戦期ほどの技術力を持つ、高度文明圏国家のニトレア王国。
軍縮条約により30cm以上の口径を持つ砲が禁止されたため、その処理をしているのだ。
「ああ、国民の血税が吹き飛んでいく……」
吹き飛ばされる湾岸砲を眺めながら、兵士がそう呟いた。
「まあまあ。これも、平和のためだから」
「平和、ねぇ……この軍縮条約は小国群の沖で、
中央帝国の戦艦が沈められたから、結ばれたものじゃなかったか?」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、中央帝国の逆ギレじゃないか」
「そうだな」
「……」
「……」
「……さて、装甲列車を爆破するかー」
「そうだなー」
彼らはそう言いながら、どこかに歩いて行った。
***
~ニトレア王国・エイコス造船所~
「ああ、完成直前のコレも解体しなきゃなのか……」
作業員は、造船所に置かれた『A-321』を見ながらつぶやいた。
それは、ニトレア王国の造船技術の粋を集めて作られた超エ級戦艦だった。
ちなみに超エ級戦艦とは、超エルスト級戦艦の略だ。
地球でいう、超弩級戦艦である。
しかし今、軍縮条約でこの戦艦は解体されようとしていた。
「俺たちの努力が水の泡に……」
「仕方ないだろ」
「だけどよぉ……あ」
「どうした?」
「戦艦ってのは、口径30cm以上の船だろ?」
「そうだな」
この世界の艦は、排水量ではなく、武装の口径で定義されている。
つまり、戦艦は30cm以上なので駄目、というわけだ。
「じゃあ、口径の小さい砲を大量に取り付ければ……」
「あっ」
こうして、『A-321』は超エ級戦艦あらため、超重巡洋艦と呼ばれるようになったのだった。
これが、超重巡洋艦の始まりである。
***
「あいつら、軍縮条約を何だと思ってるんだ!」
ルスア中央帝国、軍務局長のヤラは、
情報局から送られてきたニトレア王国の情報を見ると、そう叫んだ。
「局長、落ち着いてください」
「あ、ああ……まったく、ニトレアのやつらは……さすが島国、我々とは考え方が違う」
「それで、どうします?」
「……このままじゃ覇権国家の名が廃れる。こっそり建造してしまえ」
「了解しました」
***
「え?ニトレアが軍縮条約ギリギリの船を作ったって?」
ニトレア王国の北に位置するミヤーウラ大帝国。
その軍務局局長、リキマは部下からの報告を聞いてそう言った。
「はい。何でも、小規模な砲を大量に搭載した船がつくられたとか」
「マジかよ……よし、我が国も作ろう!」
「はい……はい!?」
こうして、ミヤーウラも超巡洋艦を作り始めた。
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