WVR-0
「え? 陽動しろって?」
『その通り』
「どうやって」
『それはそっちで考えてください、おなしゃす』
「はぁ!? いやちょ――」
結城が言い切る前に、電話が切れた。
溜息を吐きながら、スマホをズボンのポケットにしまう。
「陽動ったってどうすれば……いま魔法研究所行ってるしな」
「別に、横浜魔法研究所にいくのは後でもいいよ?」
ヒカリが、助手席から結城の方を見て、そう言った。
結城はハンドルを右手だけで動かしながら、それにこたえる。
「そうはいってもなぁ。何をどうやればいいかも言われてないし……どうするかなぁ」
言いながら、結城は「はぁ〜」とひときわ大きいため息をつき、目をつぶった。
「医院長! 前っ!」
直後、和佳奈の声が聞こえる。
「えっ? うわっ!?」
目を開くと、ビルとビルの間、T字路の右側からトラックが飛び出してきていた。
急いでハンドルを左に切る。幸い、そのトラックはよけることができたものの、目の前には電柱が飛び出してきた。
「やべぇっ!」
ハンドルを右に回転させる。
前輪が大きく右に傾いたことでトラックはバランスを崩し、そのまま片輪装甲をすると、横転しながら電柱に衝突した。
金属板がひしゃげ、コンクリートの割れる音が響き、電柱がゆっくりと地面に倒れ伏す。
「いってー……大丈夫か?」
「私は大丈夫だよ」
「私も一応は……大丈夫ですかね」
結城は運転席の扉をこじ開けると、そこから這い出た。
猛吹雪が吹き荒れるT字路には、先ほど飛び出してきたトラックが止まっている。
運転席の扉を開き、運転手が大急ぎでこちらへ駆け寄ってきた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「ああ、まぁ、大丈夫っすけど……移動手段が無くなっちゃったなぁ」
結城は横転したトラックから地面におりると、それを見ながらそうつぶやいた。
ほかの二人もはい出てきて、ヒカリは「あちゃー」と言った感じで横転したトラックと倒れた電柱を交互に見ている。
和佳奈は「ちゃんと前を見てないからですよ」などと言いながら結城を小突いていた。
「あ、あのー……」
そこで、相手のトラックの運転手が遠慮がちに話しかけてくる。
「よかったら、私たちの車に乗りますか?」
そう言いながら、T字路に止められたトラックを指さした。
先ほどはよくわからなかったが、よく見ると荷台には「加原重工」と大きく書かれている。
「あー、いや、ありがたいんですけど、俺ら横須賀基地に移行としてたんでー……」
「横須賀基地? もしかして、自衛隊関係者の方ですか?」
「え? まぁ、そうと言えばそう……かな?」
「これはちょうどいい! こっちに来てください!」
そう言いながら、運転手はトラックの荷台へ向かう。
何が何だか、と言った感じになりながらも、三人はそちらへ向かう。
すると、運転手は荷台の扉を開いた。
「これを見てください!」
「こ、これは……!」
コンテナの中は、まるで何かの管制室のようだった。電子機器が多数置かれており、モニターなども見えるのだ。
また、その中には数名の技術者らしき人も乗っている。
「な、なんだこれ……」
「わが社が誇る新型WWV、WVR-0の外部指揮車です! ちょっと説明するので、少し待ってください」
そう言うと、運転手は荷台に飛び乗り、中にいた技術者らしき人々と話し始めた。
「OKが取れました! システムの宣伝にもなる、ということで」
「はぁ……」
「実は、この事件が発生したんで、WVR-0を自衛隊に提供しようということになってたんですよ。でも、防衛装備庁とかとの話がついてない、というかつけられない状態なんで、直接基地に持っていって、話をしようと思ってたんですが……自衛隊関係者の方に会えるとは運がいい!」
「あ、ああ、そうっすか……」
「えーっと、そろそろ来るはず……あ、来た!」
そう言うと、運転手は道路の向こうを指さした。
見ると、これよりもさらに大きいトレーラーが、雪を巻き上げながら走ってきている。
「あれにWVR-0が乗ってます。あのトレーラーを渡しますから、自由に使ってください! 少し特殊なんで、使い方は教えますが――あ、私たちはこの指揮車でついていきます! これがないと、WVR-0はでくの坊なので……」
運転手は有無を言わさずそのようなことを早口で言う。
「は、はぁ……」
「医院長、どうします?」
「まぁ……そのWVR-0ってのがどういうやつなのかは知らないけど……もらえるもんならもらっといたほうがいいんじゃない?」
「じゃあ決定ですね! これキーです!」
そういいながら、運転手はカードキーを結城に押し付けると、トレーラーに向かって走っていく。
そして、もともとの運転手に何やら話をすると、その運転手が下におりた。
「仕方ない、運転するかあ」
「しかし、この中に多脚免許持ってる人います?」
「私は一応持ってるよ」
ヒカリがそういうと、和佳奈は驚いたように言う。
「え!? 持ってるんですか!?」
「うん。なんか乗ってみたいなー、って思って。結局使わなかったけど……今のところは」
「へぇー……」
三人は、そのように話しながらトレーラーへ向かい、そして乗り込んだ。
運転手からトレーラーについての説明を受ける。
「でー……ここからはWVR-0の説明になりますが」
「OK、話してくれ」
「わかりました。WVR-0は、我が加原重工が開発した試作型空挺ワーカーです!」
「空挺?」
「はい。現在自衛隊で使用されている36式もそうですが、これはその正統進化と言えます! 専用の機体がなくとも空挺降下が可能で、しかもパラシュートなしの降下にも耐えられるので、降下速度も早いんです!」
「そりゃすごい。肝心の戦闘性能は?」
「もちろん、それも折り紙つきですよ! こいつには第三の目がありますから!」
「第三の目?」
「はい! あそこです!」
そういうと、整備員は真上を指さした。
「空……人工衛星ってことかい?」
ヒカリがそういうと、整備員は視線を戻し、話し始める。
「その通りです! この機体は常時衛星とリンクしていて、カメラの映像とは関係なく、常時自身と相手の位置を把握してるんです! 一度捕捉した敵機は逃しませんし、適切な間合いも機体側がとってくれるので――」
「半自動運転、ということだね?」
「あっ、はい! その通りです! ただまあ、弱点としては――あくまで民間企業が作った試作の実験機なので、重量やらシステムやらの問題で管制装置――人間でいうところの大脳を外に出してるんですよね……」
「それがあの管制車、ということか」
結城がそうつぶやく。
「はい……。ただ、性能は折り紙付きです! それに、そもそも空挺用なので、管制車は戦場にいないはずですし……とにかく、これを差し上げますから、使って、システムをアピールしちゃってください!」
「それを言っちゃうのは企業として清々しすぎるな……まぁ、くれるんならもらいますが」
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