第3分隊
護衛艦「しなの」。
第三飛行隊室――通称、倉庫。
「機関長、どうでした?」
「だめだねこりゃ。あちこち敵兵だらけだよ」
天井裏から埃と蜘蛛の巣まみれで降りてきた女――歌宮春香機関長が、倉庫内にいたほかの隊員にそういった。
「この倉庫から出られなさそう」
「倉庫というか第三飛行隊の部屋なんですけどね……」
「幻の第三飛行隊の話は今いーの。誰かが助けに来てくれるまで待つしかないか……?」
「副長や砲雷長は捕まっちゃったみたいですしね」
「まぁ、この倉庫にいるのが3分隊のガスタービン員だけの時点でね……」
歌宮は埃を払い、つぶやいた。
「いやー、屋根裏は狭いし暗いし汚いし……」
「男じゃ入れないレベルですしね。まぁ、船の屋根裏なんだから仕方ありませんが……残ってる中で入れるの、機関長だけですし。胸も尻もないから」
「おい、今なんて――」
「と、ところで機関長、食べ物はありました?」
扉の前に物を積み上げていた隊員の一人が、慌てたようにそういった。
「え? あ、ああ、第二食糧庫に乾パンとカロリーメイトがあった。さすがに生鮮食品がある第一食糧庫は敵がいて近寄れなかったけど……」
そういいながら、彼女はポケットから物を取り出し、地面にばらまいた。
「屋根裏はめっちゃ狭いから、これくらいしか持ってこれなかったけどねー……」
「この人数なら十分じゃないすか?」
「悲しいこと言うなよ……」
歌宮は資料の詰まった段ボールを寄せ、その上に腰を下ろした。
「とりあえず司令に電話してみるかー……」
「携帯通じましたっけ」
「通じなかった。けど、今はなんか圏外が解除されてるから、通じるかも」
そういいながら、彼女は連絡先の中に表示された番号をタップした。
そして、それを耳に当てる。
少しすると、コール音が途切れ、さくらの声が聞こえた。
『歌宮機関長!? 無事だったの!?』
「通じた! はい、無事です」
『よかったー。ほかのみんなは?』
「えーっと、少なくとも自由に行動できるのは私と――」
周りを見る。
すると、整備員の一人が置かれていたホワイトボードに「11」と書いた。
「11人だけです。私が把握しているのは」
『11人!? 少ないな……まぁいいや、今、どこにいるの?』
「私たちは倉庫――第三飛行隊室に。ほかの隊員は科員食堂につかまってるみたいです」
『なるほど……そっちは動ける?』
「敵がうろうろしてるんで、大規模に動くのは無理ですかね……屋根裏を通って偵察する程度なら」
『ふぅん……そっか』
「ところで、司令は今どこに……?」
『太田君と一緒に「しなの」の第五甲板にいるよ』
「えっ!? 艦内にいるんですか!?」
『うん。いったん戻ってきた。とりあえず、どうにかして合流しようか。こっちから行くね』
「あ、はい。わかりました……」
その後も少し会話をしたのち、電話が切れる。
「司令は艦内にいるらしい。こっちに来るって」
「マジですか!?」
「おおマジ。また連絡が来るまで待機だと」
***
「えっ、歌宮機関長たちが第三飛行隊室に!?」
「うん。そうみたい。ほかの隊員は科員食堂につかまってるって」
さくらはスマホをしまいながら、直樹にそういった。
「この階層には敵の気配がありませんが……そのウタミヤって人は、敵がうろちょろしてるって言ってたんですよね?」
アイが、魔法であたりの気配を確認しながら言うと、さくらが答える。
「うん。まぁ、第五甲板は重要なところが機関室くらいしかないからね……でも、機関室の出入り口自体はもっと上にあるから、ここには人員割いてないんでしょ。そこまで人数も多くなさそうだったし……」
「とにかくみんなを助けて、重要な場所……CICとか艦橋あたりですかね? そこら辺を奪還したらどうにかなりそうな気はしますが……」
「艦内の敵はどうするのさ」
「うーん……」
直樹が考え込んでいると、アイが言った。
「陽動作戦をしましょう。外側の三人に、外から何らかの方法で艦内の敵を追い出してもらうんです」
「何らかの方法って何さ?」
「それは……向こうで考えてもらいましょう!」
「無責任だなぁ」




