エンストフィレン
結城の運転する半自動トラックは、雪を巻き上げて研究所へ向かっていた。
「エンストフィレン……それは、異世界の寒冷地で発見された新種の植物、シンセカイイブキの固体代謝物だよ」
「代謝物?」
「ああ。つまり、この植物が生命維持のために産生されている物質のことだね。それで――問題は、このエンストフィレンは従来の化石燃料に匹敵する爆発力を持っているんだ」
「え、つまりそれって――」
和佳奈がそうつぶやく。
「ああ。従来の化石燃料の代替になる可能性が高い。しかも、燃焼時にはCO2じゃなくて魔力化酸素を発生させるんだ。これは通常の酸素とほぼ同一の化学的性質を持つから――実質的に、燃えるときに酸素を排出する物質というわけだ」
「うーん……燃えるときに酸素を排出するって、それ、物質が無くならない限り永遠に燃え続けるってことじゃ?」
「いや、それはないよ。酸素を排出するとはいえ、それは燃焼時に消費する酸素よりも少ないから……ただ、エンストフィレンを狙ってるとしてたら合点がいく。あれは新規利権の塊だからね……」
そこまで言うと、結城がつぶやいた。
「なるほどな……つまり、そのエンストフィレンってのを抽出する技術が魔研にしかないってことか」
「そういうこと。しかも研究主任は私。論文データは研究室に置いたまんまだけど、あれはまだ未完成だから、あれだけじゃエンストフィレンの生成はできないはずだよ。私の頭に入っている知識がないとね!」
「……それって、俺たちが狙われてるのって、あんたを狙ってるってことじゃ……?」
「……確かに」
「まじかよー、連れてこなきゃよかった!」
「それはひどくないかい?」
車は雪を巻き上げ、走っていく。
***
「でー……ボス倒したけど、これで迷宮は無くなるんだよね?」
「そのはずです。えーっと……」
アイは、機械集合体の残骸の中から何かを取り出した。
それは、キラキラとした球体だった。
透明な球体の中に、太陽そのものを封じ込めたような神秘的な光。
宇宙原初の炎とさえ思えるそれは、燃えるものがないにもかかわらずメラメラと燃え上がり、そしてキラキラと光っている。
「これを壊せば、迷宮は無くなるはずです」
「つまるところ、それが迷宮のコアということ?」
「そういうことです。んっ……」
アイはその球体を握った状態で、手に力を入れ、それを握りしめる。
「……握りつぶそうとしてる?」
「は、はい……んんー……」
「……できる、それ?」
「わかりませんがー、壊さないと……」
その時、翔がワーカーに乗った状態で歩いてきた。
「これでつぶしますから貸してください」
「あっ、はい……」
ワーカーがそれを握りつぶすと、パリン、という音とともに炎がひときわ光り輝き、そして消えた。
それとともに、地面が大きく揺れる。
「うおっ、地震?」
「迷宮が崩れ始めてるんです。まぁ、心配しなくて大丈夫ですよ。自動的に迷宮から排出されるはずですから――」
直後、地面がひときわ激しく揺れ、あたりが光に包まれた。
思わず目をつぶる。
少しすると、突然、肌に冷たい風が吹きつけた。
目を開くと、周りには雪が広がっている。
「……外?」
「完全に迷宮が壊れたんです」
「よし、見つからないうちに『しなの』に向かおう」
「わかりました」
五人は、物陰に隠れながら護衛艦へ向かった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
などと思ったら、
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークや感想もいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。




