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場面変わって

「おーい、買ってきたよ」


そう言って、結城が自転車をこぎながら戻ってきた。


「ほら、ロープ」


自転車を止めると、かごからコーナンの袋を取り出した。

その中には荷造り用のビニールロープが入っている。


「こんな吹雪でホームセンター開いてんだね……」

「っていうか、自転車って一台ですか?」

「いや、二台買ってるよ。もう一台はロープで引きずってきてる」


和佳奈が奥を見ると、結城の乗っていた自転車の荷台にロープがつながっており、その奥に倒れた自転車が見えた。


「ほんとだ……」

「まぁいいや、さっさとロープで縛るぞー」


そう言いながら、結城はビニールロープで女を縛り付けたのち、グラヴィティ・ジャマーの電源を切った。


「しかし、この機械、どういう仕組みで動いてるんだ……」

「さぁ」

「さぁって……あんたが作ったんじゃねえの?」

「そりゃあ私が作ったのは間違いないけどさ……もとは異世界の魔法道具だからね。魔法について完璧にわかってるわけじゃないし……」


そんなことを話していると、縛り付けられた状態の女がこう言ってきた


「私をどうするつもりだ」

「どうするつもりって言われても……どうするつもりもないとしか言いようがないな」

「実際、警察に引き渡すくらいしかないけど、この吹雪で警察が来るかどうか……」

「まぁ、とりあえず警察に通報しといて。和佳奈」

「はいはい……医院長が通報してくださいよ」

「俺のスマホ、車ん中だし……」

「そういやそうでしたねぇ……」


和佳奈がしぶしぶスマホを取り出し、110番に電話を掛けた。


「あ、はい。事故――あー、いや、事件です。はい。場所は――」

「んで、あんたは誰なんだ、一体。名前は?」


結城が女にそう聞いた。

女はしばらく黙ったまま、結城を鋭い目つきで見つめていた。しかし、やがて諦めたように口を開いた。


「……イリーナ。イリーナ・ヴァレンティーナ」

「イリーナ……やっぱり、異世界人か?


結城がそういうと、イリーナは鼻で笑い、冷たい視線をそのまま結城に向けて言った。


「お前たちには関係ない。私の仕事を邪魔したこと、すぐに後悔することになるわ」


しばらくすると、パトカーのサイレンが響いてくる。

街角から、雪を巻き上げながらパトカーが走ってくると、レインコートを着た警察官が数人降りて、駆け寄ってくる。


「通報したのはあなた方ですか?」

「あ、はい! この人が、魔法で襲い掛かってきて……」

「魔法……つまり、異世界人ってことですかね」

「多分……」

「とにかく、あとはこちらに任せてください」

言いながら、警察官はイリーナに手錠をかける。

「器物破損および殺人未遂の現行犯で、逮捕する!」


そのとき、イリーナが小さく呟いた。


「後悔することになるわよ……私だけを逮捕しても、何も変わらない」


警察官は冷静な表情で、「言いたいことがあるなら署で聞きます」とだけ答え、イリーナをパトカーに押し込んだ。

そして、結城達に向かって言う。


「ご協力ありがとうございました。避難勧告が出ていますので、あなた方もすぐに避難してくださいね。では」


その警察官もパトカーに乗り込むと、そのまま、同じように雪を巻き上げて去っていった。


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