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迷宮内部

時間を巻き戻し、迷宮内。

魔方陣が再度光り輝き、アイが現れた。


「お、戻ってきたね」

「行きましょうか」


そう言って、直樹は歩き始める。

ほかの人も、それについて歩き始めた。


「この階層から魔獣が出てくるので、気を付けてください」


アイがそういう。

その声を聞いて、さくら達は銃を持つ腕に力を込めた。

樹脂でできたニセモノの蛍光灯はあたりを照らさず、スマートフォンの光だけが頼りである。

看板はいつの間にかなくなっていて、もはや、蛍光灯が樹脂製のニセモノであることを除けば、本来の護衛艦と遜色ない。


さらに、スマートフォンのライトは通常よりもはるかに低い光量に変わっている。

途中までは問題なく照らしているのだが、1mほど先になると急激にルーメンが減少し、完全に消えてしまっていた。


「なんで、ライトの明かりが少なくなってるんだろう……」

「魔法の効果でしょうね。詳しくは知りませんが……」


かつん、かつん、かつん。

安全靴が高張力鋼に当たり、そのような音を響かせる。

全体的に暗く、寒いため、スマートフォンの人工的な寒々しい光では、そこまでの安心感を得られない。


「なんでこんなに暗いんだろう」

「電灯が偽物なのと――窓の外が雲と雪に覆われてて、太陽光が入ってきてませんからね」


直樹が言う。

しばらく進むと、影の向こうから音が聞こえた気がした。

スマートフォンのライトをそちらに向けるが、何も見えず、無機質な通路が続いているだけである。

少し進むと、何かの足音が聞こえた。


「……?」


もう一度、ライトを向けたとき。

闇の中から、何かがさくらにとびかかってきた。


「うわっ!」


さくらの持っていたスマートフォンが衝撃で放り出され、光があたりを激しく照らす。

そして、ライト部分を下に着地して、何も見えなくなった。


「ちょっ、あづっ! あっづい! やめ゛ろ!」


さくらは何かと取っ組み合いをしているようだが、暗くて何も見えない。

翔と直樹がほぼ同時にライトをつけると、さくらの上には犬がいた。

犬と言ってもただの犬ではなく、体は黒い炎に覆われている。

その炎は光を発することがなく、さくらは火傷になりながらそれを払いのけようとしていた。


「ツバキ、あれを!」

『わかりました!』


ツバキがすぐさま近寄って、その犬をわしづかみにして引きはがそうとする。

黒い炎は彼女の人工皮膚も焼くが、表情は変わらず、力が弱まることもない。

さくらから何とか犬を引きはがすが、さくらは激しい火傷を負っていた。


「熱い! 熱いし痛い! 水、水ない!?」

「と、とりあえず回復魔法かけます!」

『これはどうしましょう?』

「えーっと……どうします?」

「僕に聞かんでくれ」


直樹がそういうと、さくらに回復魔法を施していたアイが言う。


「核の魔石を取り外さないと、魔物は何度も復活します! 魔石を壊すか外す貸して、殺してください!」

『わかりました』


そういうと、ツバキは炎の中に手を突っ込み、魔石をわしづかみにして引っこ抜いた。

すると、炎は一瞬で鎮火し、犬は死んだように――というか実際に死んでいるのだが――動かなくなる。


『一体炎のもとはどこなんでしょう?』

「油でも分泌してるんじゃない?」


ツバキと翔がそんなことを話していると、回復魔法で完全回復したさくらが言った。


「はぁ、はぁ、ひどい目にあった……」

「大丈夫ですか?」

「うん、まぁ……とりあえずは……回復魔法って便利だね」


そう言って、アイを見る。


「まぁ、そこまで頻繁に使うことはできませんけどね。魔力の問題もそうですが――回復魔法をかけられると、早死にするっていう話があるので」

「……ちょっと待って? そんなの使ったの?」

「そうしなければ、大変なことになっていたと思いまして……」

「まぁ、仕方ないからいいけどさ……」


「面白かった!」


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