転移
群青色の海。海上自衛隊、第八護衛隊群が海を切りながら進んでいた。
第八護衛隊群の旗艦、「しなの」の甲板に並べられている車両や荷物には、
『災害援助』の文字が見え隠れしている。
「暇ねぇ」
「しなの」の艦橋で、一人の女性が指に髪を絡ませながらそう言った。
彼女は、透き通るような白い肌で、独特な雰囲気をまとっている。
彼女の名前は木村さくら。第八護衛隊群の群司令で、階級は海将補だ。
海上自衛隊の作業服を着用しており、それには海将補の肩章が縫い付けられている。
年齢は20代だろうか。この年齢で海将補というのは、非常に珍しいだろう。
髪は栗色で、ショートヘアに切りそろえられていた。
目は、日本人に最も多い茶色い目である。
スタイルがよく、顔も整っている。美人な女性だ。
ただ、非常に身長が低く、140㎝程に見える。
「暇って……仕事中ですよ?」
「しなの」艦長の太田直樹がその言葉に答えた。
同じように海上自衛隊の作業服を着ていて、肩には一等海佐を表す肩章がついている。
背丈は木村司令とくらべてはるかに高く、180cmはあるだろう。
黒縁の眼鏡をかけており、首には双眼鏡をぶら下げている。
まさにチビとのっぽ、と言った風貌の二人。どちらも顔がよいからか、それでもよく映えていた。
「確かにそうなんだけどさぁ……」
木村はそう言いながら甲板を見る。
甲板には戦闘機のほかにも、陸上自衛隊の車両が多く止まっていた。
この航海の目的は災害援助。
この艦隊は東南アジアで発生した地震及び津波による被災地に派遣されるのだ。
そのため、陸自の施設科も乗っている。施設科というのは、いわゆる工兵という奴だ。
「仕方ないですよ。これも自衛隊の仕事ですしね」
太田が言う。
「わかってるよ」
木村はそう言って、背もたれによりかかった。
「前方に積乱雲」
士官の報告が入る。
「スコールか? 陸自はおとなしくしてた方がいいかもね」
木村は、そう言いながら立ち上がる。
そして、窓から飛行甲板を見た。
出港してからここまで、嵐どころか雨にもあっていないのに陸自のほとんどが船酔いを起こしているのだ。
その時、船体が大きく揺れる。
「おっと……思ったより揺れますね。気象レーダー、雲の様子は?」
「特に変わった様子は……あ、いえ、雲量急増!」
太田の問いに答えた気象長の声が少しうわずっている。混乱しているのだろう。
「台風の進路にでもぶちあたったか? 予報は」
「ありません」
「そうか……司令、どうします?」
「まあ、進むしかないでしょ。かわすルートもないんだし」
「了解しました」
すべての艦へ暴風雨に備えるよう警報が発令される。
「うわっ!」
再び襲ってきた波に船体が大きく斜める。
「前方に雷雲! 竜巻の発生を確認!」
「なんだって!?」
「最大戦速! 面舵一杯!」
太田が叫ぶ。
「舵輪が動かない! 何かに引き込まれる!」
操舵員が悲鳴のような声を上げる。
木村が外を見ると、海面に穴が開いていた。
そして、その穴に艦隊が引き込まれている。
「全員つかまれ!」
「総員耐衝撃姿勢!!」
全員がなにかにしがみつく。
艦隊は波に翻弄され、渦に飲まれていった。
***
「……収まった?」
これまでよりもはるかに大きい振動が「しなの」を襲った後、揺れが完全になくなった。
それに違和感を覚えた木村は周りを見回す。
他の隊員も困惑しているようで、あたりの様子をうかがっている。
「ここはどこだ?」
太田が言った。
「……横須賀?」
誰かがつぶやく。
それを聞き、木村と太田は外を見る。
見慣れた、母港の横須賀だ。
だが、いろいろおかしい。
先程まで明るかった空は暗くなっているし、何より……
「月が……二つ?」
そう、二つの月が輝いているのだ。
「夜になってるし、横須賀に戻ってるし、月が二つあるし、何もかもがどういうこと?」
木村は呆然としながら、そうつぶやいた。
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