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あの影は――?

刹那、車が吹っ飛んだ。

雪が舞い上がり、車体は電柱に衝突する。


「い、いったい何がっ!」

「と――とにかく外に!」


そう言って、結城は運転席の扉をこじ開けると、外へと這い出た。

車は先ほどの衝撃で激しくひしゃげ、窓は割れ、エアバッグが起動している。

ほかの三人もほうぼうのていで抜け出すと、暴風雪の中に人影が立っていた。


「あれは……」

「加原重工にいた女だっ!」


そう言って、結城は近くに居た和佳奈をひっつかむと、ひしゃげた車の後ろに飛ぶ。

ほぼ同時に、爆炎が巻き起こった。


「ひぇー、とんでもない爆炎だね……」


同じく、車の後ろに隠れていた北風が言う。

女は、前に突き出していた腕をおろすと、ゆっくりとこちらに近づいてきた。

車の残骸からは油が流れ出し、その一部は激しく燃え上がっている。


「と、とにかく、車から離れるぞ。ガソリンが爆発する!」


そういうと、結城は和佳奈の手を引き、走る。

北風もそれについていくのだが、車から2、3m離れた時点で――


「うわっ!」


後ろで大爆発。

炎と雪が巻き上がり、残骸があたりに飛び散った。

残骸が北風の頬をかすめ、血がだらりと落ちる。


「痛っ」

「早く行こう、どこか安全なところへ――」


だが、そのとき、彼らを追いかける影が音もなく急接近していた。

女が、雪の中を凄まじい速度で詰め、鋭い刃を振りかざして三人に襲いかかってきたのだ。


「あっ!」


刹那の覚悟を決める。

しかし、その刃は空中で何かに阻まれ、跳ね返された。


「よ、よかった、これ持ってて!」


何やら機械を掲げていた北風が、そうつぶやく。

尻もちをついた状態から、両腕を使ってもたもたと立ち上がり、再度、女とは逆側に走り始めた。


「それは?」


同じように走っている結城が聞くと、


「高周波電磁防壁――簡単に言えば、バリアだよ。細かい説明をしている時間はないが」

「なるほど。どれくらい攻撃に耐えられる?」

「さぁ、試作品だから――あと2、3回じゃ――」


言い終わる前に、炎が二人の間を通り抜けた。

北風の髪先が焦げ、パラパラと落ちる。


「――ないかなぁ!」

「すごい火力だな……」

「感心してる場合じゃないでしょ――うわっ!」


今度は、和佳奈に向かって炎が。

何とかよけるが、炎は道路に着弾、雪を巻き上げ、爆発した。

暴風雪の中、場違いな熱気が三人を襲う。


「逃げでばっかりじゃどうしようもなりませんよっ!」

「そりゃそうだけどさぁ! 北風、なんかないの、攻撃手段!」

「ナチュラルな呼び捨てやめなさいよ! まぁいいけど!」


言いながら、北風はカバンを漁る。


「武器、武器ねぇ――そういえば、研究室で回収していなかったっけ?」

「そういやそうだ! 閃光手りゅう弾あるわ! 一発だけど!」


結城がそう言って、ポケットから取り出したのはM84。


「でも、一発じゃどうしようもないですよ!?」

「結局、ないのか! 何も!」

「今探してるんだ! 黙って!」


北風は走りながらカバンをあさり、揺れでペンやらの筆記用具が転がり落ちる。


「えーっと――試作品はいろいろあるけど、武器に使えそうなものはあるかな……」

「とにかく見せてみろ!」


そう言って、結城は彼女のカバンに手を突っ込んで、適当につかんだものを引っ張り出した。

小型の機械だ。


「これは!?」

「えぇーっと、携帯型ARSの改良型! 魔法ならそれで無力化――できるじゃん! まじかよ!」

「今気づいたの!?」

「と、とにかくARSを起動しろ!」


ARSの電源ボタンを押す。

少々の駆動音がなったかと思うと、放たれた魔法攻撃は空中で消滅した。


「これで、魔法攻撃は大丈夫――かな? 多分!」

「でも物理攻撃が残ってます!」

「まだなんかない!?」


相手からの魔法攻撃をよけながら、結城は再度バッグに手を突っ込む。

そして、引っ張り出したのは棒状の機械だった。


「これは!?」

「えーっとなんだっけな……! あっ、空間振動機!」

「なにそれ!?」

「超常技術を利用したマッサージ器!」

「うーん技術の無駄遣い!」

「突っ込んでる場合じゃないですよ! もっとなんか、ないんですか!」


空間振動機を女に投げつけながら、もう一度カバンをあさる。

投げられた空間振動機を女が真っ二つに切ったとき、結城が何やら機械を引っ張り出した。


「これは!」

「あーっと、それは――あっ、グラヴィティ・ジャマー!」

「何それ!」

「日本語だと重力妨害装置! 魔法を利用して、重力を局地的に操作できる試作の実験機械!」

「何その超技術!」

「説明は長くなるよ!?」

「じゃあいい! 使い方は!」

「えーっと――」


北風による説明を受けていると、女はさらに速度を上げ、再度切りかかってこようとする。


「うわーっ!」

「グラヴィティ・ジャマー!」


そう叫んで、結城は電源スイッチを押した。

重力に引かれ、女は地面にたたきつけられる。


「がっ!」


非常に重力が強いのか、そのまま、這いつくばった状態で動けなくなっていた。


「適当に起動したが、思ったより重力が強くなっちゃった」

「実際、どれくらいの重力に――5G!? とんでもない重力に設定してるね……」


グラヴィティ・ジャマーの画面を見た北風が、驚いたようにそういった。


「よし、和佳奈、縄か何かない? こいつを縛る」

「持ち運んでるわけないでしょう……」

「じゃ、近くのホームセンターで買ってこよう。ついでに移動用の自転車も。二人とも、こいつの監視頼むねー」

「あ、ああ。……この雪でホームセンターが開いてるとは思えないけど」


北風がそう返すが、結城はそれを無視し、スマホのマップを頼りに歩いて行った。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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