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艦内の姿をした階層

揺れる艦内を進む。

船窓の向こうには猛吹雪が見えるが、外のそれよりもはるかに強く、雪以外は何も見えない。

アイはその船窓をのぞき込み、外を興味深そうに眺めていた。


「やっぱり、何も見えませんね。私も、この魔法についてはあまり知りませんが――多分、これも魔法の効果だと思います。でも、ちょっと不思議な感じ」


通路の上に取り付けられた樹脂製の蛍光灯は、一切光を放っていない。

スマートフォンのライトが辺りを照らしているのだが、窓からも日光らしき光が差し込んでいる。

外は猛吹雪のはずなのだが……。


彼女らは通路を進む。

通路自体は護衛艦内部の姿によく似ているが、しばらく進むと、壁に多数の標識が貼り付けられていることに気が付く。

止まれ、車両進入禁止、通行止め、車両通行止め、駐停車禁止などの標識が雑多に張り付けられているのである。


「なんで標識……?」

「町中だからですかね」


さくらの言葉にそう答えながら、直樹は標識を触る。

その手触りはごくごく普通の金属で、塗装の手触りさえ感じられた。

しかし、それでもどこか変に感じる。

また、いつも街中で見ているときは感じないが、非常に大きい。

横幅は直樹の肩幅と同じ程度、縦は顔二つほどの大きさを持つのである。

元の標識もこの程度の大きさはあるのだろうが、こう見るととんでもなく大きいように感じるのだ。


「しかし……人が多くてちょっと狭いね」

「そりゃあ、1、2~……8人いますからね」

「多すぎ」

「数人くらいは車に置いてきてもよかったかもしれんな……」

「戻ります?」

「面倒だしこのまんまでいいんじゃない?」

「いや、狭いって言ったのは司令でしょ?」

「ああ……」

「何その『めんどくせぇ……』みたいな顔」

「リレミトみたいな魔法があればなぁ」

「何ですか? それ」


さくらの言葉に対し、アイがそう聞く。


「ダンジョン――あ、いや、迷宮から出ることができる、ゲームの呪文だよ」

「へぇ……でも、そんな都合のいい魔法はありませんねぇ。あったとしても、私は知りません」

「だよねー……」

「ただ、転移魔法をうまく使えばあるいは……」

「転移魔法!? 君、使えるの!?」


突然、北風がそう叫ぶと、アイに詰め寄った。


「え、ええ、まぁ……」

「というか、転移魔法があるなら最初から『あった』って言っていいのでは……?」

「え、だって転移魔法は迷宮から出るためだけの魔法じゃありませんから……」

「いやでもそれはそれは含まれるじゃん……まぁいいや」

「それで、結局転移魔法使うんですか? 使わないんですか?」

「使う。使おう。そのためには、誰を戻すか……」


さくらがそういうと、北風がいった。


「あ、私は帰るよ。戦えないし、転移魔法も体験してみたいしね」

「わかりました」


そういうと、アイは何やらチョークのようなものを取り出し、地面に魔方陣を書き始めた。

そして、何やら呪文を唱え始める。すると、魔法陣が光り輝いた。


「一体どういう仕組みなんだろうな、これは」

「準備はできました。誰を戻しますか?」

「ひとまず私は帰るよ。迷宮内の調査もやりたいけども、死にたくはないしね」


北風がそういうと、結城が言う。


「じゃ、俺も戻らなきゃな。車のカギは俺が持ってるし、この暴風雪の中、車外にいるのは危ないから」

「それじゃあ私も戻りまーす。医院長を監視しなきゃならないので……」


続けて和佳奈もそういった。

この時点で、迷宮内に残るのはさくら、直樹、翔、ツバキ、アイとなる。


「監視て……」

「とりあえず、この三人だけでいいですかね?」

「いいんじゃない?」

「わかりました。じゃあ、戻る三人は魔方陣に入ってください」

「わかった」


結城が魔方陣に入る。

同じように、和佳奈も魔方陣に入った。


「……あ、そうだ。これで写真とか取ってきてくれ」


魔方陣に入る直前、北風はどこからか物を取り出してさくらに渡した。

一眼レフカメラだ。しかし、何やらごちゃごちゃとしたものが新しく取り付けられている。


「これは?」

「魔術レンズ付き一眼レフ。めっちゃ簡単に言うと、魔力の流れとかを撮ることができる機械だよ。具体的な仕組みを説明してあげよう」

「いや別にそれはいいです……」

「おや、そうかい」


少し残念そうに言うと、彼女も同じく魔方陣の中に入る。


「じゃあ、少し待っててください」


アイが何やら呪文を唱えると、魔法陣がさらに光り輝き、その姿が一瞬にして消えた。

「面白かった!」


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