ドッグファイト
「どこへ行った?」
そう行って、パイロットは周りを見回す。
レーダーは未だに使い物にならず、通信も回復していない。
雪も非常に激しく、建物は近づかなければ見えない状況だ。
かろうじてGPWSは動いているが、非常に心もとない。
この雪の中で敵機を発見する方法といえば――。
「あった!」
雪の中、右方向に光が見える。
敵機のエンジンから発せられるもので間違いないだろう。
急いで操縦桿を倒し、機体を急旋回させる。
しばらく飛んでいると、敵機の姿があらわになった。
「よし、このまま追いかけて――」
『ザ……ザザー……HQより……ト隊へ。HQよりエルボー隊へ。敵機を撃墜……よ。繰り返……撃墜せよ! ザ……ザザザー……ザーーーー』
「通信が……! こちらエルボー01、了解!」
『ザーー……』
一瞬だけつながった通信にそう返すと、敵機を睨む。
コンピューター誘導は使えないので、ミサイルは使い物にならない。
しかし、それは相手も同じだ。
「しかも、向こうの機体はF-35。それに対して、こっちはF-15J。運動能力はこっちが上だ!」
標準を覗き、バルカン砲の引き金を引いた。
――ヴゥウウウウウウン!
重い咆哮のような銃声とともに、大量の銃弾が飛んでいく。
しかし、相手は急旋回し、それを避ける。
そのまま、雪の中へと消えていく。
「どこへ……」
そう言いながら、あたりを見回す。
すると、後ろになにかが見えた。
「しまった、背後を取られたか!」
急旋回すると、先程まで機体が位置した場所を大量の弾が通り抜けていった。
F-15JはF-35と比べると古い機体だが、その分、ドッグファイトは得意となっている。
ステルス性に関しては、それを重視しているF-35と比べると低いものの、レーダーが機能していない今、物を言うのはステルス性ではなく、運動能力。
当然、有利なのはこちら側のはずだが――。
「相手、雪をうまく利用しているな……!」
この暴風雪だ。相手から少しでも離れれば、ほとんど機体は見えなくなる。
相手は急接近と急離脱を繰り返すことで、実質的なステルスを実現しているようだ。
「こうなったら……」
相手を釣り上げて、雲を抜けるか。
そう考え、操縦桿を引いた。
機体を一気に急上昇させると、今度は急降下し、一気に相手へ近づいていく。
ミサイルが使えない今、空中戦でものをいうのは高度だ。
重力を味方につけ、急速にスピードを上げながら行く。
もう一度バルカン砲の音が響くが、相手は簡単にそれを躱した。
こちらの機体が敵機の横を通り抜け、相手よりも高度が下がった後に、再度急上昇する。
強いGがかかる中、敵機の高度を越えた。
敵機も、高度有利を取るために急上昇しており、二機の高度はどんどん上昇していく。
「よし、この調子で釣り上げるぞ……!」
高度はどんどん上昇していき、やがて、雲の中に入った。
視界は先程よりも悪くなるが、こちらのほうが上にいることがわかる。
「くそ、ほとんど何も見えん……!」
周りを見回すが、雪の中ではぼんやりと見えていたにも関わらず、雲の中では本当に何も見えない。
雲の中で暴風が吹き荒れているのか、操縦桿が右や左に大きく取られてしまうものの、それをなんとか修正しながら更に上昇する。
後ろ……いや、この場合は下かもしれないが、そちらの方向を見ると、相手もついてきているようだ。
何度かバルカン砲を撃ってきているが、やはり、急上昇中であるためか一切あたっていない。
「早く雲を抜けてくれ……!」
直後。周りが光りに包まれ、一瞬目をつぶる。
もう一度開くと、眼前には青空が広がっており、煌々と輝く太陽が浮かんでいた。
雲を抜けたのだ。
「抜けたっ!」
操縦桿を倒し、機首を大きく下げる。
強いGで機体が折れそうになるが、なんとか方向転換を終え、そのまま雲を抜けたばかりの敵機に突っ込んでいった。
「当たる……!」
そう確信し、引き金を引く。
放たれた弾丸の雨は、相手の機首とキャノピーに命中した。
再度機首を上げ、平行飛行に移る。
相手も同じように機首を下げ、こちらの後ろを取ろうと動いていた。
命中したとはいえ、あたった数は数発であり、致命傷ではなかったようだ。
――ヴォオオオン
咆哮が響く。
こちらの後ろを取った敵機が、バルカン砲を撃ったのだ。
「うわっ!?」
機体の姿勢が崩れる。
エンジンの片方に命中し、そちらの出力が落ちたのだ。
なんとか姿勢を保ちながら、相手の後ろを取ろうとする。
しかし、相手も後ろを取られないよううごくため、上昇、降下、急旋回が何度も繰り返され、あちらこちらへと体が引き寄せられる。
「ただ――視界良好なここだと、有利なのはこっちだ!」
太陽を背に、敵機へと突っ込む。
相手がこちらに気がつく前に、バルカン砲で、敵機の右翼を撃った。
翼はいとも簡単に折れ、揚力を失った敵機は降下し始める。
しかし、エンジンの出力でなんとか墜落は免れているようだ。
「とどめだ!」
今度は、後ろからエンジンを撃つ。
すると、エンジンから炎を吹き出したかと思うと、敵機の姿勢は急速に崩れ、錐揉みしながら下に広がる雲に突っ込んだ。
「……なんでベイルアウトしないんだ?」
その様子を見ながら、パイロットはそうつぶやく。
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