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横浜の空を飛び回って

「早く荷物をまとめろ! 家に帰れなくなるぞっ!」


横浜市、とあるオフィスビルの43階。

ここに入っている会社では、社員が帰るための身支度をしていた。

大寒波がこれほど激しくなった現在まで仕事を続けていたのか、という感じではあるが、やはり日本人、ということなのだろうか。

その直後、窓を後ろにしていた上司は、ふと後ろを振り向く。


「なっ――!?」


白い雪の中から灰色の機体が現れたかと思うと、高速で窓のすぐ近くを飛び去っていったのだ。

空気圧によって窓ガラスが割れ、破片の嵐がオフィス内を襲う。

ガラスと雪が混ざった嵐は、オフィスの温度を一瞬にして1、2度にまで引き下げた。


「戦闘機……!? なんでこんなところにっ!」


景色も見えない猛吹雪の中、戦闘機が飛んでいるなんて、一体何が起こっているのか。


***

「今のビル、人が居たか……? もう避難勧告が出てるぞ!」


パイロットはそうつぶやきながら、敵機を追いかける。

猛吹雪の中、目の前には摩天楼が霞がかって見えている。

その一部には光が見え、先程近くを通り過ぎたビルにも人が居たように見えた。


敵機は迷っているのか、こちらを撒くことに専念しているのかはわからないが、何度も急降下と急旋回、そして急上昇を繰り返し、ビルとビルの間を抜けていく。

それを追いかけ、こちらも旋回と降下、上昇を繰り返していると、あたりの景色が真っ白であるためか、どちらが上で下なのかわからなくなってくる。

空間識失調だ。周りの景色が何も見えないこの状況で、三半規管が異常を起こしているのである。

計器を信じろ、と頭に浮かんだ直後、機内に音声が鳴り響いた。


『Pull up! Pull up!』


急いで操縦桿を引き上げる。

その直後、目の前に道路が現れるが、ぶつかる直前で機体は大きく姿勢を変えた。

排気が道路の雪を巻き上げる中、機体は信号機の下を通り抜け、もう一度急上昇。

航空管制灯を横目に、市街の上空へと飛び上がった。


***

ワイパーが窓に積もった雪を払い、スタッドレスタイヤが道路の雪を巻き上げる。

大豪雪によって人の消えた横浜市街を、猛スピードで進んでいた。


「医院長、スピード違反!」

「この状況でスピード違反もクソも無いと思う」


和佳奈と結城がそのような会話をしているのを見ながら、さくらがつぶやく。


「しかし、さっきの戦闘機は一体……」

「スクランブル出動がかかったんでしょう。空母が奪われてる時点で、相手が戦闘機を使うことは確定していますし……」

「まぁ、良い、問題は相手の向かう先だ。一体どこ?」


さくらがそう言うと、北風が答える。


「霞ケ関だろう。政府を転覆させるなら、そこを攻撃するのが一番いい」

「霞ケ関か……ここからなら何分くらい!」

「高速使えば50分!」


言いながら、結城はハンドルを大きく切り、車は雪を巻き上げながらドリフトする。


「もっと早く行けない? 味方機を先導しなきゃ! この雪じゃ、絶対周りが見えてない!」

「無理がある! 車の速度が戦闘機に勝てるか!」


「面白かった!」


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