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首都圏上空



「エルボー01よりHQ、応答せよ。エルボー01よりHQ!」

『ザー……』

「くそっ、無線が通じない……」


雑音だけが響いてくる無線機の電源を切り、パイロットは目を凝らす。

反乱部隊の戦闘機が、国会議事堂に向かって飛び立ったという情報が入り、百里基地からこの

第305飛行隊、コールサイン「エルボー」が派遣されたのは良かったのだが、飛行して数分し、突然、通信が途絶。

僚機とはハンドサインで連絡し合って飛んでいたものの、この暴風雪で彼らも見失ってしまった。

パイロットは喉の渇きを感じながら、緊張した面持ちで前方を見つめ続ける。

引き返すという選択肢が頭の片隅に浮かぶものの、それはすぐに打ち消された。

今、ここで自分が戻ったら、それは文民政府の敗北を意味する。

それだけは、絶対に避けなければいけない。

コックピット内は妙に静かで、自身の呼吸音だけが聞こえる。

通常なら頼りになるはずの機器類は、今や無力な装飾品と化しており、レーダー画面には意味のないノイズだけが踊っていた。

今や、信じれるのは自身の目と耳、そして勘だけだ。


「……」


息を吐く。

迫りくる黒い影を避けながら、目標地点に向かって飛んでいた。

影の端では赤い光が点滅しており、おそらく航空管制灯だろう。

ここが都市部なのは間違いないのだが、今どこを飛んでいるのかもわからない。

ほとんど当てずっぽうに飛んでいる状況だ。

――直後。

白い壁を突き破り、灰色の機体が現れた。


「うわっ!?」


操縦桿を倒し、すれ違う。

見ると、翼にアメリカの国籍マークが書かれていた。

間違いない。アレが、在日米軍反乱部隊の機体だ。


「こちらエルボー01、敵機と遭遇!」

『ザー……』

「……追跡する!」


伝わっていないだろうが、無線機にそう叫ぶと、急旋回する。

あっという間に見失ってしまったが、しばらく飛んでいると、視界の端に光を捉えた。


「あっちか!」


再度、急旋回。

敵機は、ビルのすぐ近くを飛び回り、こちらを撒こうとしているようだ。

それになんとか食いついていると、相手は急降下する。

降下角度は、目測で約90度。とんでもない急降下だ。

パイロットは軽く舌打ちをすると、こちらも急降下してそれを追った。


***


「早くエンジンかけてよ」


後部座席から、さくらがそういう。


「わかってる! なんかかかんないんだよ……エンジンが凍ったのか?」

「んなバカな。横浜だぞ?」


直後、轟音とともに、道路に防風が吹き荒れた。


「うわっ!」


巻き上げた雪が車に襲いかかる中、天窓を見ると、日の丸の書かれた戦闘機が、一瞬で通り過ぎていく。


「空自!?」

「なんでこんなところに! ってか低空飛行しすぎだバカ!」

「そんなんどうでもいいからエンジンかけろ医院長!」


そう言って、和佳奈は結城の頭を叩いた。


***


「くそ、相手は手練れだな……?」


歩道橋や標識の下を通り抜け、道路に積もった雪を風で吹き飛ばしながら、敵機を追う。

幸い、この大寒波のお陰で街に人は居ない。

建物にさえ被害を与えなければ、ここでドッグファイトしたとしても、そこまで被害は出ないだろう。

ただ、相手は民間人への被害など考えていないと考えたほうが良い。

もしかしたら、こちらでは考えつかないような攻撃をしてくる可能性もあるのだ。

敵機は建物の直前で急上昇し、そのまま建物の上へと飛び上がる。

こちらも急上昇し、同じように建物の上空へと飛び上がった。


「エルボー01、威嚇射撃の許可を問う」

『ザー……』

「……やっぱり駄目か。……一旦、追跡を続ける」


「面白かった!」


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