研究室の作戦会議
「さて……君たちの車が突っ込んできたから、ここは期せずして安全地帯になったわけだ」
初対面である、結城と和佳奈の自己紹介が終わったあと。
北風博士はそう言うと、キャスターつきの椅子に座り込む。
研究室にはコンクリート片が散らばっており、車は血だらけで停車している。
その停車場所は、ちょうど出入口の扉を封鎖していた。
車が破壊した壁は、崩れたコンクリート片によって塞がれている。
「車は動くかい?」
「衝撃で、前輪の車軸が折れてますね。修理しないと……あと、タイヤもパンクしてるし。エンジンは――流石に無理っすね。修理しようにも……やっぱ無理です」
翔はそう言うと、車のボンネットをぼんとたたいた。
「あの衝撃で突っ込んだしなぁ」
「魔力さえあれば、私の魔法で直せると思います」
アイがそう言うと、さくらが言う。
「あれ、魔力無いの?」
「ありますけど……このレベルの修理がもっと必要です」
「なに、君は魔法使いか?」
「え、ええ」
「なるほど……それは好都合だ」
そういうと、北風は立ち上がる。
「警察にはもう通報した。車を修理して、ココから離れたほうがいいだろう」
「警察でどうにかなりますかね? こんな武装の奴らっすよ」
そう言って、結城が先程の兵士たちを指さした。
兵士たちは車に高速でぶつかられたために気を失っているが、生きてはいるので、適当なロープで結び、むき出しになっている鉄骨に固定している。
骨折していたようなので、結城が一応の応急処置は行った。
傷自体に命の危険はないので、悪化さえしなければ死ぬことはないだろう。
「これは……アサルトライフルってやつかな? ピストルも持ってるし……」
そう言って、結城が拾い上げたのは、M4カービンとベレッタM9だ。
他にはMP5などの短機関銃、M67などの破片手榴弾と、M84、スタングレネードも転がっている。
「ずいぶん重武装だな……」
「ありがたくもらっていこーぜ。ちょうど武器足らなかったしね」
「わたしたちはともかく……結城たちは使えんの?」
「当然無理なので閃光手榴弾だけもらっときますねー」
そう言うと、結城はM4カービンとベレッタM9をそのへんに放りだし、M84を拾い上げた。
「……医院長、無駄に武器について詳しくないです?」
「自衛隊の武器はほとんど知らんよ。FPSで知っただけだからね……」
「FPSて……ん?」
さくらは、壁にかかっているケースに気がつく。
金属製で、リュックサックほどの大きさのケースだ。
窓もついていないので、中身がわからなかった。
「これは?」
「ああ、それは火災時用のケースだよ。何が入ってるのかは知らないけど……消火器とかじゃないかな? ほら、鍵」
北風博士はそう言って、鍵を投げてよこす。
それをキャッチすると、ケースの蓋を開いてみた。
「あ、これは……マスターキーじゃん!」
「違うな?」
直樹がそういう。ケースの中には、赤い斧が入っていたのだ。
「消防斧……まさかそんな物が入ってるとは」
「珍しいっすね」
翔がそういうのを尻目に、さくらは斧を手に取る。
「結構重いね……」
「そりゃ消防斧ですからね」
「よっしゃ、オレが武器として使おう」
そう言って、結城はさくらから斧を受け取った。
「銃器は使えないんでね……」
自衛隊員組は、転がっている銃器を拾い上げ、残弾を確認する。
運の良いことに、殆どの武器はワンマガジン分満タンであった。
しかも、敵兵は多数のマガジンを持っている。
それをベルトごと奪い、ついでに防弾ベストも奪って着用した。
「ちょうど人数分あったな」
「ご都合主義ぃ」
「……で、武器は手に入りましたけど、車の問題は変わってませんが」
「問題ない。ココは魔法研究所だぞ? たしか――アイくんといったかな?」
「あ、はい」
「君の魔力を回復する方法がある。研究室に『レスファリン』を取りに行くんだ」
「れすふぁりん?」
「ああ。細かい原理は省くが、体内の魔力生成を促進する薬品だ。経口摂取が楽だし、それでいいだろう。レスファリンは薬品保存庫に少量だけ保管されてる。保管されてる研究室がある場所は――地下だ」
「地下?」
「ああ。研究室で爆発が起こってから、地下に異動させたんだよ。地下ってだけあって頑丈だから、ミサイル攻撃を受けた今も残ってるはず」
「え、ミサイル攻撃受けてたんですか!?」
「言ってなかったっけ? 一番最初にミサイルが突っ込んできて、すぐに兵士が流れ込んできたんだよ」
北風博士はそう言うと、椅子から立ち上がる。
「さ、エレベーター……は駄目だな。停電したらやばい。から、階段で行こう」
そう言って、ドアへと向かった。
車がドアを塞いでいるが、こちら側からならなんとか超えれそうである。
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