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こいつ、キチガイだ!

電話が切れる。

すると、運転をしていた結城が言った。


「これからどうする? とりあえず、どっか拠点になりそうなところに行くか?」

「それがいいと思うけど――拠点ってどこかね。港の方はあれだし……」

「七瀬の家にでも押しかけてみるか」

「だいぶ迷惑。拒否されない?」

「大丈夫大丈夫。いざとなったら、この車にチェーンソーとかカテーテルとか、注射器とか――あと薬も乗っけてるから」

「チェーンソーを積んでいることには突っ込まないぞ」

「……一体何をするつもりなのさ」

「血を抜いて血液バッグ作るよって脅す」

「サイコやん」

「ARKのプレイヤーかな?」

「七瀬の血液型はO型だから、回復アイテムとして使えるね!」

「そんな万能じゃねえぞ血液バッグ」

「というか私達よりあんたのほうがよく知ってるでしょ、血液バッグ」

「そりゃまあ外科医だしね」

「あんた外科医だったんだ……」

「内科医が手術してたら怖くね?」

「たとえ外科医だったとしてもあんたが手術するほうが怖い」

「は?」

「――ってか、チェーンソーのせいで引っ張られてたけど、薬って何? 一体何の薬?」

「今はまだ合法な薬」

「絶対やばいやつじゃん」

「合法だから。まだ」

「規制されないと駄目なタイプの薬じゃん」

「大丈夫大丈夫、ちょっとハイテンションになるだけの抗うつ剤さ」

「覚醒剤じゃん」

「違いますー。合法ドラッグですー」

「その呼び名は違法なんよ」

「ハイになるのが違法だとでも?」

「うん違法だね」


そんな事を話しながらも、車は和佳奈の家へと向かう。


***


「こんちわー! 不届き者でーす!」


そう言って、結城がインターフォンを何度も殴っている。

雪の中、ピンポーン、ピンポーンといった音が何度何度も鳴り響き、しばらくして和佳奈が対応した。


『医院長ですか……帰れ』

「帰らない。お前を血液バッグにする、もしくはオレ達をいれる、どちらか選べ」

『……』

「お、無視か? お前の大切な家の扉をチェーンソーでぶち壊してもいいんだぞ」


そう言うと、結城は車のトランクからチェーンソーを取り出し、それを地面においた。

右足で後ろハンドルを踏み、スターターグリップを引っ張る。

すると、エンジンの音が響いた。


「わかったら早く開けな。10秒以内だ」


そう言いながら、チェーンソーを持ち上げ、スロットルトリガーを引く。

すると、鎖鋸が高速で動き、「ヴィィイイン」という音が響き渡った。


「じゅーう、きゅーう、はーち……」

『わかった、わかったからやめてください。ここ借家なんです』

「OK、さっさと開けろ」


そう言うと、彼はスロットルトリガーから手をはなした。

しかし、エンジンはかかりっぱなしなため、スロットルトリガーを引いたら、すぐにでもものを切れる状態だ。


「脅しについては何も言わないけどさぁ。もう諦めてるから。チェーンソーのエンジンは切ってよ。怖い」


さくらがそう言うと、結城は答える。


「大丈夫大丈夫。高校は農業科だったから」

「農業科から医者になったの……?」

「学費の無駄遣いですね」


アイがそういった。


「おーい。和佳奈ー。早く開けろー。ピッキングするぞー」

「堂々と違法行為を告白するな」


直樹がそう言うと、扉が開かれた。


「はぁ……入ってください。チェーンソーは車において」

「おーけーおーけー。最初から扉開けろー」

「もうあの病院やめようかな……」


***


和佳奈の部屋は、一般的なアパートの一室、といった感じだった。

医者にしては質素な部屋である。


「だいぶ質素だねえ」

「貯金好きなんで」

「へぇ。大麻……じゃなかった、まだ合法な薬を隠すのにはちょうど良さそうだ」

「合法なのに何で隠すんだよ。絶対合法じゃないだろそれ」

「合法です。まだ」

「……で、医院長たちは何をしに来たんですか?」

「お前を血液バッグにしようと――「違う!」――あ、そうだった」


ローテーブルの周りに座り、さくらが説明を始める。

説明が終わると、和佳奈は言った。


「そんな事になってたんですか……テレビ見ないから気が付かなかった」

「……そういや、ネットニュースでは見たけど、テレビ報道では見てないな。つけてくれ」

「自分でつけてくださいよ……」


言いながら、和佳奈はテレビの電源をつける。


『――により発生した在日米軍反乱事件の経過についてですが、反乱部隊は日本政府に米国の独立と異世界領土の割譲を要求しています。日本政府はこの要求を全面拒否する姿勢を示していますが、反乱部隊は横須賀海上自衛隊基地を占領し、護衛艦や在日米軍兵器を利用した暴力によって要求を通そうとしています。なお、他の米軍による支援は今のところ確認されておらず、米国大使館は日本政府に協力するとのコメントを――』


テレビからは、緊迫したニュースが流れている。


「……ま、一旦安定したし――アレをするか」


結城は座椅子に腰掛け、そういった。


「アレ?」

「そう。アレだ」


「面白かった!」


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