退避ーっ!
刹那。
扉がぶち破られ、銃を持ち、迷彩服を着た兵士が英語で何かを叫びながら、部屋に入ってきた。
「みんな伏せろ!」
机やベッドの下に飛び込む。
それとほぼ同時に、銃弾の嵐が吹き荒れた。
薬品棚が破壊され、様々な薬品が床に散乱する。
銃弾はガラスが割り、診察室の壁を穿ち、カーテンを引き裂いた。
診察室がめちゃくちゃになったと思うと、白い煙が辺りに充満する。
散乱した薬品同士が混ざり合い、何らかの化学反応が起きたのだろう。
「窓から脱出!」
弾が切れたのか銃弾の嵐が収まると、デスクの下にいた結城がそう叫び、窓へ走る。
さくらがアイを抱えてそれを追い、直樹と翔もそれに続いた。
窓は先ほどの射撃で完全に割れており、開ける必要もなく飛び出せる。
リロードが完了したのか再度銃撃が来るが、アイが魔法で防御してくれたため、無傷で脱出できた。
「アイちゃんありがとう!」
「どういたしまして」
四人は雪の上に落下する。
辺りに白い雪が舞い、結城が一番最初に起き上がった。
「早く車に!」
そういいながら、自分の車のロックを解除。運転席に乗り込んだ。
ほかの四人も車に乗ると、窓から銃撃が降ってくる。
急いでアクセルを踏みこみ、駐車場から脱出した。
***
「そういえば――前の車って乗り捨てたよね。新しく買ったの?」
しばらく走ったのち、さくらがそう聞くと、結城がいった。
「ああ。SUVARUのレイラック。SUVだから、雪道でも楽に走れる。天窓も開くよ」
「へぇ……ってか、よく銃弾を防げたね。こんな一般車で。防弾仕様?」
「いや、そんなわけないだろ」
その時、アイがいった。
「ああ、防御魔法を車にかけておいたので。何分間も撃たれ続けない限りは大丈夫ですよ」
「……なるほど。やっぱり魔法って便利すぎるねぇ」
結城はそういいながらハンドルを握っている。
「で、どこに行くの? これから」
「う~ん……どうしようか」
と、その時、車内に電話の着信音が鳴り響いた。
「あ、僕です」
そういいながら、直樹がスマホを取り出す。
その画面には、『副長』と表示されていた。
「副長からだ。スピーカーにしますね」
そう言って、直樹はスマホをスピーカーにし、車内テーブルに置く。
『あ、つながった……艦長、司令も、無事ですか?』
電話越しに、「しなの」副長の谷中俊平二佐の声が聞こえた。
「ああ。無事だ。そっちはどうなった?」
『今、資料室に立てこもってます』
「『しなの』に資料室なんてあったっけ……」
さくらが、会話に割り込んでくる。
『ありますよ。機密情報一杯の資料室が。順次、海に捨ててますけど……』
「燃やさないの?」
『こんなところで燃やしたら危ないでしょう。一酸化炭素中毒起きますよ』
「それもそうだ」
『で……奴らは「しなの」の殆どを乗っ取りました。CIC、食堂、士官室から艦長室、司令室まで』
「え、司令室も?」
『はい』
「私の私物だらけなんだけどな、あそこ……」
『奴らはそんなこと気にしないでしょう。……まぁ、それはいいとして――こちら側は資料室、機関室、あと医務室で籠城しています』
「だいぶ分かれてるな」
『一応、換気ダクトでそれぞれの部屋とはつながってますけど……』
「そういや、『しなの』の換気ダクトはクソでかいんだっけ。匍匐なら通れるレベルで」
「ええ。空調システムの効率を高めるために大きく設計されてます。ただ、ダンパーがあるので普通は通れないんですが……」
直樹とさくらがそう話していると、電話の向こうの俊平が入った。
『ダンパーはぶっ壊してます』
「え、まじ?」
『はい』
「どうやって」
『私が殴って、ぶっ壊しました』
「ゴリラかよ」
俊平の話を聞いて、さくらがそうつぶやいた。
『とにかく、奴らは艦長たちを狙っているようです。こっちもどうにか頑張るので、そちらも気を付けてください』
「なんで僕たちを……まぁいい、わかった。ところで、他のみんなは?」
『幹部は私と歌宮機関長、佐々木砲雷長が。曹士は一分隊から12人、三分隊から8人、五分隊から9人が集まっています。あ、あと、航空隊のパイロットが3人』
「だいぶ少ないなぁ……しかも、航海科がいないのか。船は動かせないな……」
『座礁してるのでそもそも動けませんけどね』
「そういえばそうだ。でも、パイロットがいるのは幸運かもしれない。航空戦力が使えるかも――飛行機はどうなってる?」
『奴らはF‐35をロナルド・レーガンに運んでます。ただ――』
「ただ?」
『F‐35JやF‐35改は残されてます』
F-35J。異世界転移前、F-35を下に国産化された日本仕様機だ。
F-35と比べてステルス性が劣っているものの、速度と機動性は上回っている。
なぜこのような性能になったのかというと、F-35J開発当時、日本の仮想敵国たる中国軍が運動性能の高い機種を続々配備し、それと対等に渡り合える運動性能が求められたのだ。
と、このような事情で開発された機体であるため、見た目は無印F-35と比べてスタイリッシュになっている。
ちなみに、これが作られるもととなった中国軍の機体であるJ-40は瀋陽飛機工業集団によって作られた戦闘機だ。
一定のステルス性能と高い運動能力を持っており、ほぼ毎日のように尖閣諸島に飛来していた。
もちろん、異世界転移したあの日も尖閣諸島に飛来しており、転移に数機が巻き込まれている。
それらの機体は、現在沖縄の自衛隊基地にて保存されているらしい。
閑話休題。
そして、F-35Jを下にさらなる改良を施した機体がF-35J改だ。
この機体は、異世界転移後に作られたものであり、もはや、無印F-35と比べると見た目も性能も大きく変わっており、完全に別の機体として運用されている。
この機体の特徴として、運動性能が大幅にアップしていることがあるだろう。
無印F-35はもちろん、F-35Jよりも圧倒的に高い運動性能を持つが、ステルス性が大幅に低下している。
この理由は、異世界のレーダー精度が非常に悪いことと、その普及率がはるかに低いことだ。
この関係上、費用のかかるステルス機をわざわざ作る必要性は薄く、そのかわりに高い運動性能が求められたのである。
ただ、今のところ、運動性の低い戦闘機でも異世界の戦闘機やドラゴンと比べたら圧倒的に強いものため、これは建前に過ぎず、日本の技術を異世界に誇示するため、異世界の住民にとってわかりやすい運動性や速度が重要視されたのだ、ともいわれている。
「なんで戦闘機を持っていったんだ……?」
『「しなの」はまだ我々が抵抗してますので、「ロナルド・レーガン」に移動させることで新たな航空戦力を確実に確保に確保する目的でしょう』
「じゃあ何でF-35だけを……全部持ってったほうが多くの戦力を手に入れられると思うが」
直樹がそう言うと、さくらがいった。
「おそらく、ステルス性の問題だろう。F-35J改はもちろん、F-35Jも、無印と比べたらステルス性がかなり低くなっているからな」
「ステルス性……秘密裏に計画を進めようとしてる、てことでしょうか」
「そういうことだろう」
『まぁ、何にせよ、こちらは「しなの」をなんとか取り返すんで、頑張ってください』
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