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病院


「どこまで行きましょう」


「しなの」が見えないところまで来ると、

船の舵を握りながら、翔がそう聞いた。

席に座っていたさくらが、その問いに答える。


「横須賀からは離れたほうがいいだろうし――よし、横浜まで行こう。奴らも横浜にすぐ来ることはできないだろうし、横浜ならあの病院があるからね」

「あの病院……ああ、勅使川原さんの」

「そう。実質拠点だからね、あそこ」

「了解。それじゃあ、横浜までノンストップで行きますよ」


エンジン音をさらに響かせながら、船は猛吹雪の中を進んでいく。

しばらく進んだのち、船を横浜の護岸につけた。

降り立った道路は、海沿いということもあってかがらんとしている。

波が激しく、船を固定しなくては流されてしまいそうだ。


「やはり寒いな……早くあの病院に行こう」

「はい」


近くの工事現場にあったロープで船を係留し、三人は病院へ向けて歩き出した。


***

薬品棚とベッド、デスクが置かれており、デスクと壁の間には埃の被った消火器が置かれている。

デスクの前に座りながら、結城がこういった。


「いやしかし……この雪の中でよくこれたね」


結城がそう言った。診察室の窓からは、先ほどよりも強くなった雪が見える。

ただ、猛吹雪と言うほどではないが。


「ええ、まぁ。……あれ、七瀬さんは?」


直樹がそう聞くと、結城は言う。


「あいつは帰ったよ。雪が激しくなったんでね……私は引き留めたんだけど。お金を稼ぐ効率が下がる」

「クソみたいな理由だな」


結城の話を聞いて、さくらがそうつぶやいた。

と、その時、扉が勢いよく開かれ、アイがとびこんでくる。

彼女は、そのままさくらに抱き着く。


「さくらさんっ!」

「うわっ」

「気配を感じたので来たんですが、やっぱりいた!」


診察室のベッドに腰かけていた翔が、二人の様子を見てつぶやいた。


「あの二人、いつの間にあんなに仲良くなってたんスか?」

「事件後も定期的にあってたらしいよ」


結城がそう言いながら、スマホで何かを調べている。


「……米軍の一部部隊が反乱だって。護衛艦を襲ったのは、この部隊じゃない?」


そして、そういいながらスマホの画面を見せてくる。

そこには、NHKのネットニュースが映っていた。


「その画像、『しなの』を襲った部隊だ……その反乱に巻き込まれたのか」


抱き着いてきたアイをなでながら、さくらがそういう。

記事に載っている航空写真には、先ほど「しなの」を襲った部隊が映っていた。


「しかし……ずいぶん懐かれてますね」


直樹が、二人を見ながらそういう。


「……というかなんで病院にいるの? この子」

「錠前のお見舞いに来てたんだ」

「錠前? ……え、生きてたのあいつ!?」

「はい! 今は病室で眠ってますよ」


驚いたさくらに、アイがそう答えた。


「そ、そうか……」

「……さて、これからどうするのさ。君たち」


そういいながら、結城は白衣を翻し、立ち上がる。

窓の外の雪はさらに強くなっており、吹雪一歩手前という様子だ。


「どうするも何も……どうしようかなぁ」

「決めてないのかよ」

「とりあえず避難してきただけだからさ……」


直後、エントランスの方から何かが壊されるような音と銃声、悲鳴が聞こえてくる。


「一体何でしょう」

「少なくともいいことではないだろうね……」

「面白かった!」


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