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嵐の中の静けさ

~護衛艦「しなの」艦橋~


「あー寒い寒い……」


さくらは、カイロを揉みながら言う。


「いつの間にか、異世界転移して一年以上たってましたね……」


直樹がそう言った。

今日の日付は2037年2月25日。

異世界転移したのが2035年8月であるため、

異世界転移から1年半以上が過ぎたことになる。


「そうだね……異世界転移して二度目の二月だ」


さくらは、そう言いながら窓の外を見た。

空は灰色で雲も分厚く、雪の勢いも強い。

雪が激しく危険なため、艦内の隊員は厳戒態勢だ。

ただ、休暇の隊員への緊急収集などは行われておらず、艦内の人数は航行時よりも少ない。

さくらが外を見ると、岸壁の雪かきをしている隊員が見える。

当然だが、岸壁の雪かきも海上自衛隊員の仕事だ。

舞鶴ならともかく、ここは横須賀。

雪かきに慣れていない隊員も数多くおり、

この大寒波であることもあってか、雪かきは遅々として進んでいない。


「しかし……前々から思っていましたが、司令って背が小さいですねぇ」

「急に失礼だな。君の背が高いだけだよ。何センチ?」

「183㎝です」

「高っ」

「逆に司令は何センチなんですか」

「……160㎝だけど」

「普通ですね」

「別にいいでしょ」

「しかし、なんでこんなにも身長が低いように思えるんでしょう……」

「そりゃ君との身長差――『司令、嘘はダメですよ嘘は』――なにさ」


会話を聞いていた翔が、さくらに言った。


「僕が160㎝くらいなんで、司令と僕は同じ程度の身長じゃないとおかしいんですよ。でも――」

「内村の方が高いな」


直樹がそういう。

翔とさくらの身長差は、10㎝以上あるように見えた。


「ずばり、司令の身長は140㎝でしょう!」

「失礼だな! 148㎝だよ! ――あ」

「……そんなちっさいことで嘘つかないでくださいよ」

「う、うるさいな!」


と、その時。さくらは何かに気が付いたように言う。


「……あれ、ツバキは?」

「あれ、ツバキは?」

「ああ、無理な改造と使用で故障しまして。加原重工の整備センターに送りました」

「ツバキってメーカー保証受けれるの?」

「当然、メーカー保証は受けられませんよ。修理を保証なしで依頼することになるので――相当高くつきました。まぁ、自費ですし、大丈夫ですよ」

「君は大丈夫でもさぁ。あれだけ改造した機体なんだから――加原重工の整備員さんが大分気の毒だね」


そういいながら、ふと外を見た。雪はさらに激しくなっている。

甲板に大量の雪が積もり、航空機の発着艦はできなさそうだ。

風も吹いているようで、風力計は10.9m/sを叩き出している。


「しかし……寒いって言っても、ファリスター魔導王国の時と比べるとはるかに暖かいですよ?」

「あの時はパワードアーマーを着てたじゃん。今は生身だからさ……」


当然、パワードアーマーは駆動により発熱する。

そのため、パワードアーマーを着ていたら極寒の場所でもそこそこ暖かく入れるのだ。

最も、現在は生身でいるため、気温がダイレクトに伝わってきているのだが。


***

~横浜市橋霧町・勅使川原医院~

横浜市も大寒波によって大雪に見舞われている。

交換したために真新しい窓越しに外を見て、結城がつぶやいた。


「すごい雪。これはお金稼ぎにもってこいの気候だ」

「それ台風の時も言ってましたよね」

「台風と言えば……錠前の様子は?」

「回復してますよ」


死んだと思われた錠前だが、実は生きていることが判明。

勅使川原医院に運び込まれ、治療を受けていたのだ。

アイがほぼ毎日のようにお見舞いに来ており、今日も確か来ていたはず。


「様子見に行くか。七瀬は資料書いててねー」

「殺すぞー!」

「急な罵倒」


***

勅使川原医院、302号室。

結城は、扉を思いっきり開いていった。


「ちわー、問診に来ましたー!」

「うわびっくりした」


そういったのは錠前だ。

ベッドに病衣姿で座る錠前の隣には、ナイフでリンゴの皮をむいているアイがいる。

二人の指には、銀色の指輪が光っていた。

よく見ると「Yokohama magic laboratory」と書かれている。

たしか、あれは指輪型ARSというやつだ。

つけている人だけ、魔法などの異常現象から守られる……というものだったはず。


「結城さん、どうしたんですか?」


アイはそういいながら、慣れた手つきでリンゴを切った。

それを見ながら、錠前は少し辟易したような顔をしている。

そういえば、アイが錠前のお見舞いに来ているときは、いつもリンゴを切っていた気がした。


「問診……とは言ったけど、実際は様子見に来ただけー。大丈夫っすか?」

「ええ、まぁ。まだ痛みますけど」


あの後、遺体安置所に安置されていた錠前が突然蘇生し、病院が大混乱。

いろいろありながらも、この病院に入院することに。

蘇生の原因は、新木星を破壊した時のビームのエネルギーが錠前に流れこみ、蘇生したのでは……という推測だ。

しかし、それも推測なので、今後も治療と経過観察、調査は必要だろう。


「しかし雪がひどいですねぇ」


窓の外を見ながら、錠前はそうつぶやいた。

結城も窓の外を見る。

先ほどよりも雪が激しくなっており、視界が悪くなっていた。


「こりゃ今日は泊まりだな……」

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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