回想、ギャルシリア革命
その後、ギャルシリアには異常なまでの変化が起こった。
アベルの働きかけで国家のインフラ事業がルヴトレムに委託されたのを皮切りに、食糧管理、教育、司法、軍事と様々な国家事業がルヴトレムへと委託され始めたのだ。
軍事の管理がルヴトレムへ委託された後も、近衛兵や王室親衛隊は王家直属の部隊であるため、ルヴトレムの管理下に下ることはなかったのだが……
「たいちょー。やっぱおかしいっすよねぇ」
サラは、木剣でセルエルと打ち合いながら、そう話しかける。
「何がだ?」
「何がって……ほら、隊長だっておかしいと思ってるんでしょ? 今のこの国が、ルヴトレムに支配されていってること……」
「あー……まぁな。っと」
セルエルはサラの木剣を弾き飛ばすと、言った。
「だが、どうしようもあるまい」
セルエルの視線の先には、城があった。
ギャルシリア王家の象徴たる城。
しかし、それはどんどんつくりかえられ、近代的なビルへと変わっていっていた。
それを眺めていると、その王城から近衛兵の一人が走ってきて、セルエルに話しかけた。
「たた、隊長っ!」
「どうした?」
「る、ルヴトレムが反乱を起こしました!」
「なに!?」
「現在、王家から近衛兵の出動が要請されています。至急王城へ!」
***
その後、戦況の確認が行われると、ギャルシリア側は非常に劣勢であることが分かった。
首都南部は完全に奪われており、ルヴトレムは北部へも進軍している。
また、現在、ギャルシリアが自由に使える軍隊は近衛兵しかいない。
ルヴトレムに軍事を任せていたからだ。
「と、いうことで、この『ヤルッタ橋』を、我が国の最終防衛線とする」
作戦参謀がそういった。
作戦参謀といっても、急遽任命されたものであるため、元は普通の将兵なのだが。
ヤルッタ橋とは、現代のテンヌルッシャー橋のことである。
テンヌルッシャー橋という名称は、ギャルシリア王国の地名をすべてなくそうとしたルヴトレムがつけた新名称なのだ。
***
~ギャルシリア王国・ヤルッタ橋~
セルエル隊は、この橋で敵を待ち構えていた。
セルエルが隊長を務めるセルエル中隊のうち、サラが隊長のサラ小隊は橋に、セルエルは橋塔に配備していた。
「サラ、そっちはどうだ?」
『まだ敵は見えませんが……暑くて』
「ふむ……」
また、中隊の残りの一隊は、首都防衛隊として都市内部に駐留している。
セルエルが気温計を見ると、29℃を超えていた。
「たしかに、暑いな」
とても冬ではない、と思っていると、見張り塔から報告が入った。
「敵部隊を視認! 魔導戦車を大量に従えて近づいてきています!」
「来たか……総員、戦闘用意!」
『了解!』
兵士たちが戦闘用意をした直後、ルヴトレムは大量の砲撃を橋に与えた。
橋塔は崩れ、橋の路面も破壊される。
橋げたは驚異の強度によって耐えているが、それでも限界があるだろう。
橋の門も破壊され、大量の兵士が駆け込んできた。
この兵士たちには、サラの小隊が中心となって対応することになる。
「ってー!」
サラがそう叫ぶと、橋に設置された大砲が発射された。
この大砲は、17世紀のカノン砲によく似た大砲である。
ルヴトレム側は19世紀後半の大砲を利用しているため、技術格差は非常に大きい。
しかし、剣や槍、弓と比べたらはるかに高い威力を誇るため、利用する価値は十分にあった。
大砲の弾は大きくそれ、川や柱に着弾する。
敵兵は、大砲の弾が飛び交う中、白兵戦を仕掛けてきた。
その突撃により、橋上は敵味方入り混じる大混戦になった。
「っと! 危ないっ!」
サラも敵と切りあい、剣と剣のぶつかる音が鳴り響いた。
「うわっ!?」
敵の攻撃でサラの剣が弾き飛ばされる。
崩れた橋塔のがれきから脱出したセルエルが、それによって手ぶらになったサラを発見した。
「サラ!」
セルエルは自分の剣を投げつけると、サラに叫ぶ。
「それを使え! 剣がなきゃ戦えんだろう」
「はい!」
サラはそれをキャッチし、近づいてきていた敵兵を切り殺した。
「くそっ!」
「あいつ強いぞっ! 包囲しろっ!」
敵は、サラを囲むように展開した。
そして、一気に襲い掛かってくる。
それを何とかいなしていくが、サラは鎧ではなく近衛兵の服を着ているため、一度でも食らったら致命傷だろう。
布なんて、剣だったら簡単に切り裂いてしまう。
「まずっ!」
その時、剣が真っ二つに折れた。
橋塔が倒壊したことで、何らかのダメージが剣にもあったのだろう。
剣を放り投げ、ひとまず撤退しようと駆けだす。
しかし、足が何かに撃たれ、そのまま倒れこんだ。
どうやら、敵の剣士隊の後ろからやってきていた魔銃隊が、サラを撃ったようである。
セルエルは助けに行こうと動くが、その瞬間、爆音とともに橋塔がさらに崩れ、がれきがセルエルの足にのしかかった。
「くっ……!」
身動きができなくなり、サラを見ることしかできない。
サラは撃たれた方の足を引きずりながら離れていこうとするが、
敵兵に髪をつかまれ、無理やり立ち上がらされる。
「放せっ!」
サラはそういうが、敵兵が剣を首に突きつけ、言う。
「ヘヘヘ……やっと捕まえたぜ。しかし、これだけ苦労したんだ。ただ殺すのは惜しいな……。おい、どうする?」
その兵士は近くの敵兵にそういった。
気が付くと、セルエルとサラ以外の味方兵は倒されてしまっている。
セルエルはがれきの中にいるので見つかっていないようだが、時間の問題だろう。
「そうか……じゃあ、こいつをめちゃくちゃにしてから殺すのはどうだ?」
「そうだな。それがいい!」
兵士たちはそういうと、サラに襲い掛かった。
「い、いや……!」
サラは抵抗するが、多勢に無勢だ。すぐに押さえ込まれてしまう。
一人の兵士はサラの服を脱がせ始めた。
「へへっ……思ったよりかわいい顔してるじゃねぇか……」
兵士はにやにやしながら言う。
「おい、俺の分を残しておけよ?」
「あぁ、わかってるさ」
兵士が服を脱がし終え、下着に手をかける。
セルエルは何とか助けようと身をよじるが、がれきは全く動かない。
その直後、建物がさらに崩れ、降ってきた瓦礫が頭に直撃。
セルエルは、ぼんやりとした視界でサラのほうを見る。
「放せっ!」
「放せって言われて放すやつがいるかよ」
手を伸ばすが、そのまま意識を失ってしまった。
***
「……」
現代。テンヌルッシャー橋。
セルエルはちょっとしたタイムスリップを終えたような、そんな感覚でいた。
あの後、ルヴトレムの革命は成功し、ギャルシリア王国は崩壊。
セルエルはルヴトレム軍に発見され、奴隷……いや、下級社員として働くことになった。
サラがあの後どうなったかはわからない。
橋には旧ギャルシリア兵たちの死体が放置されていたにもかかわらず、サラの死体は発見できなかった。
そのため、生きている可能性はあるが……。
あれから数年がたった現在も、サラの安否は不明なままだ。
あの日と同じく、以上に暑い今日。
空を見上げると、青い空を鏃のようなものが飛んでいくのが見えた。
「あれは――」
「お前っ! さぼるなっ!」
ルヴトレム兵がそう怒鳴り、鞭でセルエルを叩いた。
「ぐあっ……!」
セルエルは地面に倒れこむ。
「ったく……これだから下級社員は……」
そんな声が、後ろから聞こえてきた。
その直後、別のルヴトレム兵が叫ぶ。
「敵襲ーっ! 敵襲ーっ!」
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