適正ランクとは?
北風は書類棚を開き、中から資料を引っ張り出した。
「これだこれ」
「そんなの見せていいんですか?」
「そういう契約してるから……あ、ここだ」
彼女はそう言い、資料をさくらたちに見せた。
その資料の治験者は、魔力適正「E」と書かれている。
「魔力適正は下からF、E、D、C、B、Aというランクに分かれている。異世界人の平均ランクはC、日本人の平均ランクはFだね。Fってのは、魔法が使えない人のこと。一般的には魔力適正なし、と言われるが――ま、君たちもFランクってことだ。Eは本当に少しだけ魔法が使える人。魔法といっても意識的に使える人はほとんどいなくて、ちょっと運がいい、みたいな感じだね。Dになると意識的な魔法の使用が可能になってくるよ。最も、弱い魔法しか使えないが……。で、Cランク。一般的な魔法はほとんど使えるようになるね。Bランクは、強い魔法使い。Aランクともなると……もう神の領域だ。異世界人でもその数は非常に少ない」
「神の領域……」
「あと、魔法適正さえあれば、たとえどんなに弱くても訓練すれば魔法を使うことができる。日本人でもね。だから、このEランクの子はここで訓練を受けてるよ。今日はいないけど……」
「へー……」
「……あ、そうだ。音楽と魔法の関係性についても話そうか」
「音楽……ですか?」
「その通り。この映像を見て」
そう言って、冬風は部屋に置いてあったテレビの電源をつける。
すると、そこには研究室の映像が映っていた。
魔法使いの服装をした人がたっており、先ほどと同じように電極をあちこちにつけている。
魔法使いの5メートルほど前には、プラスチック製の的が置かれていた。
「さっきのと違って、この実験は映像でも十分わかるからね。再生するよ」
冬風がそう言ってリモコンのボタンを押すと、テレビの映像が再生され始めたのと同時に、スピーカーから吹奏楽が流れ始めた。
「これは……『威風堂々』?」
「そう。よく知ってるね」
「まぁ有名ですし……」
スピーカーから流れているのは、エドワード・エルガー作曲の行進曲集、「威風堂々」だ。
どうやら映像内で流れているらしく、魔法使いが音の出所を探っているのが見える。
「でもなぜ『威風堂々』を?」
「これまでにもYOSAOBIの『アイドル』とか、ボカロ曲の『千本桜』とか、いろんなタイプの曲を利かせながら魔法を使わせる実験はしたんだけど、『威風堂々』を流したこの実験が、一番魔法との関係性がわかったからね。
あ、流した曲、聞きたい?」
「まぁ……ちょっとだけ」
「オーケー。まずさっきも言った『アイドル』『千本桜』。次に『Lemon』。さらに『ラビットホール』『ラグトレイン』『きゅうくらりん』『ロキ』……」
「ボカロ曲ばっかり」
「私ボカロ好きだから。でー……『ソーラン節』『君が代』『軍艦行進曲』『海上自衛隊隊歌「海をゆく」』……」
「曲のカテゴリめちゃくちゃだな」
「いろんな曲を使ったほうがデータを取りやすいからね。さらに『Bling-Bang-Born』、そして『威風堂々』だよ」
「多いな……」
「データを取るためにはいろんな曲を使って何度も実験するのが一番だからね。……さて、この実験では、曲によって魔法の威力に差があることがわかったんだ」
冬風がそう言うと、映像内で変化が起きた。
映像の中の魔法使いが、魔法を使って的を吹き飛ばしたのである。
「凄っ……」
「見ての通り、曲によって威力に差があるんだ。ほかの曲でもこの傾向が見られたんだけど……その中でも、『威風堂々』は一番魔法の威力が強かったんだよ。次に強かったのは『海をゆく』だね。これは魔法使いの嗜好で変わるらしくて……この人はボカロ曲とかが苦手だったみたい」
「へー……」
「で、いろんな魔法使いを使ってこの実験をやった結果、どんな人でも『威風堂々』が一番威力が高かった。次に高かったのは、さっきと同じく『海を行く』だね。……ちなみに、『海をゆく』は歌詞なしの音源を流してるよ」
「え、つまりそれって……」
「そう。歌詞なしの曲を聞かせたほうが、魔法の威力が高くなる」
「精神的な関係でしょうか?」
「かもね。少なくとも私はそう考えてる……あ、実験で流した曲『マーシャルマキシマイザー』もあった。見る?」
「いや、いいです」
「……まぁ、こんなことを長々と言ったけど、これからの研究で、ここまで言ったことが全部ひっくり返る可能性もあるわけだ。へー、そうなんだレベルに考えて、余り信じ込まないように」
そう言って、北風は話を打ち切った。
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