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魔法とは何か?

北風は全員の答えを聞き終えると、再び口を開いた。


「……そうか。まぁ、日本人どころか、この惑星の人のほとんどは魔法をそのように理解している。でも、それは間違い……というまでではないが、まぁ……何だろう、何といえばいいのか。とにかく、違うんだ。科学と魔法を、別物として考えてはいけない」

「はぁ……」

「細かく説明しよう。えーっと……」


北風は立ち上がり、本棚の横に置かれた古いホワイトボードを引っ張り出す。

ホワイトボードには上着などが多くかかっていたため、それがばらばらと落ちた。

山盛りになった服や本を押しのけながら、さくらたちの前にホワイトボードを立てる。


「えーっと、ペンは……これでいいや」


床に落ちていた水性ペンを手に取り、ボードに文字を書き始めた。


「さて……まず、魔法の定義についてだが」

「定義から話すんすか?」


翔がそういうと、北風はこう返す。


「定義は重要だよ。でー……魔法とは、『魔法原子』を取り巻く現象の総称だ」

「魔力元素?」

「ああ。私が発見した新しい原子の名前だ。この原子の周りには、電子の代わりに「魔法電子」、通称「魔電子」が回っている」

「それ電子じゃないですか」

「わかりやすく「魔電子」と名付けただけだ。科学的性質も、電子とは全く違う。魔電子は正の電荷と負の電荷を交互に持つ素粒子なんだよ」

「電荷……って何ですか」

「え? あぁ……電荷ってのは、物体が持つ電気的な性質のことだ。正と負の二種類があるぞ。高校で習わなかったか?」

「……そういや習ったかも」

「……魔法原子の説明に戻るぞ。原子核の周りにある魔電子は、さっきも言った通り正と負の電荷を交互に持つ、非常に特徴的な素粒子だ。最も、その変換速度は0.001秒程度だから、通常の観測ではそれは確認できず、+と-を繰り返しているとはいえ、ほとんど中性みたいなものだな」

「なるほど。普通の原子も中性だったはずだから、つまりは同じってことですね?」

「いや、同じではないが――……まあいいや。それでいい。この魔法原子……めんどくさいから魔子と呼ぶが、この原子は、大気上の酸素や窒素と結合し、魔力化酸素や魔力化窒素として空間上を滞留する」

「……つまり、今、この場所にもそれがあるってことですか?」

「その通り。魔力化酸素や窒素を吸い込むと、体内で分解され、酸素、窒素、魔子に分かれる。別れた魔子同士が結合してできるのが、魔力と呼ばれる等核分子だ」

「等核分子?」

「ああ。同じ原子でできている分子のことで――O₂やN₂もそうだな」

「なるほど」

「話を続けるぞ。魔力は体内の血管を流れ……魔法を使おうとすると、毛細血管から汗腺を通り、体外に排出される。体外に排出されると、魔力は宇宙線の中性子を捕獲し、重魔子にかわる」

「……なんで、魔力化酸素や魔力化窒素は重魔子に変わらないのに、魔力は重魔子に変わるんですか?」

「どうやら、魔子が捕獲する中性子は特殊な宇宙線中性子で、魔子が酸素や窒素と結合し、魔電子と電子の混ざった化合物では捕獲できないようだ。だから、魔電子だけの等核分子である魔力だけが、その中性子を確保できるわけだな」

「……それ、本当に中性子なんですか?」

「中性子なのは間違いない。なぜ、魔電子だけがこれを確保し、原子核に入れることができるのかは謎だが……まぁ、いったん話を戻そう。魔子が魔電子に変わった際、魔電子が激しく動き、その揺れを伝える波動……魔力波を発生させる。この魔力波はシナプスの活動によって形成される電位分布……つまり、脳波を増幅させ、媒介する性質を持つ。これによって媒介された脳波信号に触れた重魔子は、それに合わせてその性質を変える。これが、一般的に言われる魔法の正体だな」

「すごい性質の原子ですね……」

「これを発見した時はそりゃまあ大騒ぎだったさ。最も、性質を変えた後の重魔子は、すぐに壊変して魔子に戻り、酸素や窒素と結合して魔力化酸素や窒素になってしまうし、重魔子ができた時点でそうなるのは確定してるんで、この重魔子を魔法以外で使うことはできないんだが……あ。あともう一つ。魔力化酸素や窒素も、重魔子ほどではないが、魔力波を放出している。

この魔力波は重魔子の放出する魔力波と違って、脳波を増幅する効果はない。この魔力波の激しさ=魔力化酸素及び窒素の総量だから、空間上の魔力化酸素、窒素の量……いわゆる魔力量を観測するときは、この魔力波を観測する。この魔力波の単位が、よく使われる「hyt」だ」

「へぇー……なるほど」

「……理解してるか?」

「ぜんぜん」

「…………まぁいいや。説明はあと少しで終わるし……。んで、ARSはこの魔力波を打ち消すものだということは知っているだろう。魔力波を打ち消すと魔法が使えなくなるのは、重魔子が脳波を読み取れなくなるからだな」

「ああ、なるほど……まぁ、なんとなくわかったかも?」


北風は、これまで言った内容をホワイトボードに書ききると、時計をちらりと見る。


「もうこんな時間か。まぁ、あと少しで終わるから。とりあえず、この動画を見てくれ」


そう言って、彼女はパソコンの操作を始めた。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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