魔導機関車
~魔導機関車・屋根上~
魔導機関車。
魔石の力で動く機関車で、この世界では蒸気機関車よりも広く普及しており、高度文明圏以外では、機関車と言えば魔導機関車である。
また、ルヴトレム企業共栄圏では線路の規格が統一されており、日本の一般的な線路幅が1067mmであるのに対し、ルヴトレム企業共栄圏の線路幅は1372mm。
これは、日本でも路面電車などで使用される幅であり、日本の場合は馬車鉄道由来のものである。
なお、魔導機関車は、基本的に魔力で動くため、魔石を消費する。
また、魔導機関車は燃料としての魔石からの燃料補給のほか、列車走行中でも空気中の微量な魔力を自動吸収するため、列車の運用費用を大幅に減らすことが可能だ。
しかし、欠点として速度が遅いというものがある。
一般的な魔導機関車は時速40kmほどが最大速度で、これは世界初の旅客鉄道、リバプール・アンド・マンチェスター鉄道の機関車、ロケット号より少し遅い程度だ。
なお、部隊の乗っているこの列車は、港からのコンテナを運ぶ地下鉄道であることがわかっている。
蒸気機関車は通常黒煙を発生させるため、地下鉄道は難しい。
しかし、魔導機関車は魔力で動くため、黒煙を出すことはない。
そのため、地下鉄道も簡単に作ることが可能なのだ。
先ほどの場所は、その地下鉄道が偶然地上を通る場所だったのだ。
今も地上を走っているものの、すぐに地下に入るだろう。
このまま屋根にいてはトンネルにぶつかってしまうので、早急に車内へ移動するのがいいだろう。
屋根上出入口をこじ開け、中に入った。
***
貨物車内。
見る限り、小麦粉や塩、砂糖などの食品が積み込まれているようだ。
車内に入った直後、列車が地下に突入。窓の外が暗闇に包まれた。
『運転席へ行き、この列車を乗っ取るぞ』
そう言って、シズクは貨物車の扉を開いた。
その先は客車のようだが、誰もいない。
進むためにその車両に踏み込むと、窓から一気に光が入ってきた。
列車が再度地上に出たのだある。
いつの間にか雨が降り始めており、列車の窓に張り付いた雨粒が横へ横へと流れて行っていた。
もう一つ先の車両へ向かうと、待ち構えていた魔銃歩兵がトークロイド隊に向かって発砲。
弾が到達する前にグレネードを投げ込み、扉を閉めた。
車両は鉄製であるため、弾が貫通することはない。
爆発音が響いた後、扉を再度蹴り破り、残った兵士を掃討する。
先の扉を開くと、外に出た。
扉の向こうは多数の魔石が積まれた車両であり、そのさらに向こうに運転車両があるのも見える。
この車両は、通常の蒸気機関車における石炭車両のようなものだろう。
周りに通路がないので、積まれた魔石の上に載って進もうとする。
その直後、どこからか音が聞こえてきた。
見ると、どこからか現れた敵兵が後ろから走ってきている。
「面倒な」
シズクはそういいながら、魔石車と客車の接合部を撃った。
連結装置が壊れ、後部車両と魔石車両が分離、急速に距離を話していく。
こちらに来ようとして来ていた兵士が勢い余って線路に落ち、そのまま後部車両の下に飲み込まれていった。
兵士の体を巻き込んだ車両は脱線し、近くの建物に突っ込む。
あたりに轟音が響き、土煙が立った。
その直後、キキィーー! という、甲高いブレーキ音が鳴り響く。
列車が止まり、運転席やその周辺から兵士が襲い掛かってきた。
***
さて、こちらはある程度高い場所にいるため、地上の敵兵が列車に上るのに数秒、さらにこちらのいる高さに登るのに数秒を要する。
列車に乗っている敵兵はそれよりも素早くこちらのいる高さに登れるだろうが、それも数秒早いというだけだ。
こちらは地形的に有利だが、登られてはその有利も掻き消えるだろう。
登らせるのは何としてでも阻止しなくてはならない。
また、いくら武装的、地形的にこちらが有利とは言えども「質より量」と言われるように、普通に戦っていてはじり貧になる。
そのため、速やかに戦闘地域から脱出することが戦闘の勝利条件だ。
ただ、列車は囲まれているため、降りて逃げることはできない。
であれば、答えは一つ。
列車の運転車両を乗っ取り、再度これを動かすのだ。
現在、運転車両に最も近い位置にいるのは三番機。
彼が運転車両へ行くまで、計算では約10秒かかる。
ただ、運転車両から出てきた兵士もいるので、実際はそれよりかかるだろう。
シズクは一瞬でその思考を終わらせ、内部通信機で各機に指示を出した。
三番機が運転車両へ、他の機体が襲い来る敵兵に対処する。
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