ガトリング魔銃歩兵
敵部隊を「あまぎ」まで連行した後、トークロイド部隊は遺跡を占領、湾岸防衛員詰所へと向かった。
『詰所には……誰もいないな』
詰所内は慌てて逃げだしたような跡がある。
おそらく、退避命令が発令されたのだろう。
庭には紙の燃えカスがあり、資料を燃やしたであろうことは間違いない。
また、庭にはタイヤ痕があり、車で逃げだしたことが分かった。
一部のトークロイドを残し、CWV分隊と合流。
大通りを歩いて駅へと向かった。
通りの横には堀のようなものがあり、そこには線路が走っている。
おそらく、フサワ貨物駅とつながる、貨物列車の走る路線だろう。
街を進んでいる途中、道の陰からダンプカーが走り出てくる。
そして、ダンプカーの荷台に乗っていた大量の兵士が急いで降りてきた。
大量の兵士が、トークロイド隊を囲む。
こちらは30機のトークロイドと、5機のCWV。
数では負けているが、武器の威力はこちらが上だ。
トークロイド隊は即座に戦闘準備を終わらせる。
「攻撃開始っ!」
その直後、敵隊長がそう叫ぶと、兵士たちは襲い掛かってきた。
***
道路は、前側も後ろ側もどこからか現れたハーフトラックに封鎖されてしまっている。
トラックから駆け下りてきた兵士は合わせて二十名ほどで、全員魔導銃を持った魔銃歩兵だ。
先ほどの魔銃歩兵が持っていた銃とは少し形が違い、ハンドルが付いていない。
第一次世界大戦期のガトリングガンに酷似しているその銃からは弾帯らしきベルトが垂れ下がっているが、通常の弾帯とは違い、銃弾ではなく紫色の石、魔石を弾帯に巻き付けている。
また、重装備を着用しており、イタリア王国軍のアルディーティをもっと装甲化したような見た目だ。
敵の数が多く、トークロイド隊は絶体絶命の状況である。
「撃てえええ! うてぇえええええ!!」
敵部隊の誰かがそう叫ぶと、魔銃歩兵がガトリングガンの引き金を引いた。
弾帯の魔石が銃の中に吸い込まれていき、隣の排出口から色褪せた魔石が排出され、それが地面に転がった。
あれは、魔導銃における薬莢のようなものだろう。
銃口から大量の弾が打ち出され、トークロイドやCWVに向かって飛んでくる。
トークロイドはCWVの後ろに隠れ、それを防いだ。
CWVの装甲は厚く、簡単には貫けない。
しかし、トークロイドはそうはいかない。
装甲が薄いために、トークロイドの装甲は簡単に貫かれてしまうだろう。
数機は破壊されるが、多くはCWVの後ろに隠れられている。
今回使用されているCWVは、34式歩行戦闘装甲車。
36式と比べて旧式ではあるが、36式の値段が約100億円なのに対し、34式の値段は約30億円であるため、こちらのほうが多く保有することが可能だ。
34式は直立四足歩行式のCWVであり、山岳の多い日本の地形に合わせた行動が可能となっている。
また、この兵器の最も恐ろしいところは、これまで複数人が必要だった兵器を、たった一人、あるいは二人で運用できるという点だ。
なお、これが正式採用された当時、各地で「自走砲不要論」が唱えられた。
34式たった一台で重迫撃砲の運用が可能であるうえ、標準関係は機械がやってくれる。
こうなれば、自走砲が一切不要レベルになるのだ。
しかし、その考えはすぐに否定されることとなった。
2034年のRIMPAC演習の際、自衛隊CWV部隊が米軍自走砲部隊の前に敗北を喫したのだ。
当時は軍事用CWV黎明期だったため、自衛隊側のCWV運用ノウハウが発達していなかったことが敗因とされる。
そのため、数こそ少ないものの、現代も自走砲を保有する部隊が存在しているのだ。
なお、これは34式に限らずだが、多くのCWVは目的に応じて偵察用ドローンやMANPADS、ATGMを搭載することができる。
つまり、これ一機で理論上は重迫撃砲中隊、対舟艇対戦車中隊、MANPADS小隊を纏めることができるのだ。
また、これの登場により財務省で戦車不要論が再燃。
一機で様々な兵器の代用になるため、戦車よりもコストパフォーマンスが高い兵器として、多くの戦車を買うより、数機のCWVを買うのが得策であるとされたためだ。
まぁ、現在はいろいろあって戦車不要論も鳴りを潜めているが……。
『とりあえずは大丈夫そうだが、このままだとまずい……』
シズクがそうつぶやいた直後、どこからか笛の音が響いてきた。
見ると、道の横を走る線路を、貨物機関車が走ってきている。
『……あれだっ!』
部隊はバッと動き、機関車の上に飛び乗った。
CWVは装甲があるので、列車に飛び乗ることなく敵兵を押さえている。
敵兵はCWVの対処にご執心で、列車に乗ったトークロイド隊は目もくれなかった。
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