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遺跡

白魔導士は魔銃歩兵に回復魔法をかける。

やけどがあっという間に治っていくが、服は治らないのでほぼ全裸の状態だ。

五番機がフサワ電波塔の旗竿に掲げられているルヴトレム株式会社の社旗を降ろし、彼女にかぶせる。

それを見ながら、一番機が「あまぎ」に連絡。

「あまぎ」から人間の救護班と遠隔整備ロボット班が走ってきた。


医療用トークロイドは患者の治療に特化しており、運搬には向いていない。

また、一般的な作業用トークロイドは人を運搬するように設計されていないため、少々運搬が雑になってしまう。

患者の運搬は、技術が発展した現在も人間の仕事なのだ。

閑話休題。


なお、フサワ電波塔周辺はトークロイド部隊によって制圧されたため、

民間人はともかく、自衛隊の医療班程度なら問題なく行動できるようになっている。


遠隔整備ロボット班は、整備士による遠隔操作で動く車輪駆動式の小型ロボットだ。

整備士自体が来ることもできるのだが、ロボットのほうが効率的なので戦場での整備にはロボットが使用される。

また、このロボットはトークロイドではなく、整備のためにだけ作られた効率重視の機体。

大まかに人型ではあるものの、トークロイドほど人っぽくはない。


「あれ? けががない……」

『敵魔導士による回復魔法で治療しました。しかし、完全治癒できたとは限らないため、精密検査をお願いします』

「回復魔法? そんなもんあったら俺たちの仕事なくなるやんけ……ま、まぁ、わかった」


衛生員は混乱しながらも魔銃歩兵を担架に乗せ、「あまぎ」へと運ぶ。

故障した六番機は整備ロボットに回収され、ほかの機体もスキャンによる精密検査を受けていた。


『シズクウゥウ!!! 無事だったかおめぇええ!!!』

『鬱陶しい。離れろ。あと作戦中だから「一番機」とよべ』


そんな中、一機の整備ロボットが一番機にまとわりついている。

スピーカーから整備員の涙ぐんだ声と、後ろで誰かが笑う声が響いていた。

彼の名前は松野下ヒカル。「あまぎ」トークロイド部隊の整備員で、一番機「シズク」の担当である。

担当トークロイドに対する愛着が強すぎて、ずっと一番機……というかシズクにまとわりついて動く男だ。

さすがに作戦時は他の隊員によって引きはがされたが、その異常なまでの執着は隊員間で噂になっている。


ちなみに「あまぎ」の整備員と友人である翔はこの噂を聞いており、「しなの」内で噂を言いふらし続けていた。

その結果、噂は海上自衛隊中どころか一般にまで広がり、国内の一部オカルトサイトでは「怪奇! 海上自衛隊の異常性愛者!」という見出しで記事が書かれているとかいないとか……。


『さっさと整備しろアホ』

『あ、うん』


整備ロボットのスピーカーから「急に態度変えすぎだろ」というツッコミが聞こえた。

整備ロボット操作システムのマイクは非常に収音性が高く、マイク周りの音はどんな音でも筒抜けである。


ちなみに、この整備ロボットや操作システムは同じ「しなの」型である「しなの」にも搭載されている。


***


フサワ古代遺跡。

整備を終えた第一、第二分隊が集合し、第一小隊となってこの建物に入った。

ここは全世界で発展していたという古代超魔導文明の遺跡であり、元は聖堂のようなものだと考えられている。


古代超魔導文明は前期、中期、後期で分類され、最も発展していたのが中期、最も衰退していたのが後期だ。

現存する遺跡は時代によって量が変わり、後期の遺跡が最も多く、中期の遺跡が最も少ない。

前期の遺跡はそれなりに多くのものが存在するが、時代的に中期、後期のものよりも古いため、ほとんどは経年劣化によって崩壊している。


この遺跡は中期の遺跡だとされているが、他の中期遺跡と比べて利用されている技術の水準が非常に低い。

そのため、中期の中でも衰退期に作られたものだろう。


ルヴトレム株式会社による保存加工は行われているものの、やはり経年劣化には抗えないのか、屋根のほとんどは落ち、壁には苔が生えている。

出入口には木製の大扉が取り付けられていた跡があるものの、扉自体は腐り、もはや原型をとどめていなかった。


第一小隊は、草に覆われた石畳を踏みしめながら、遺跡へと入る。

崩れた屋根から差し込む月明かりは、部隊を青く照らしていた。


壁に沿って木材の足場が組まれており、それが近年になってルヴトレムによって作られたものだということは一瞬でわかる。

おそらく、調査や崩壊阻止のためのものだろう。


あの足場が崩れれば、この遺跡はあっという間に崩壊。

建物に隠れる伏兵は一網打尽にできると思われる。

……が、足場を崩すのは最終手段だ。

「横浜エルラト顕現事件」以来、日本はこの世界に存在したという古代文明の情報を欲している。

ただ、日本勢力圏内の遺跡はすべてが小さいものであり、そこから情報を得られることはほぼ不可能。


しかし、この遺跡は日本にとっては初の巨大遺跡だ。

ここを確保できれば、古代文明に関する調査は一気に進むだろう。


横浜エルラト顕現事件でアイが使用した魔法は、古代魔法文明による「古代魔法」と呼ばれるものらしく、その威力は核兵器にも匹敵する。

……いや、もしかしたら核よりはるかに上かもしれない。


日本は、非核三原則によって核保有が禁止されている。


それは、転移後軍拡を続けた現在も変わらない。

いくら日本が軍事力を手にしていたとしても、地球唯一の戦争被爆国だという事実は変わらないのだ。


ただ、核を持たずとも、核に匹敵する力を持てれば強い抑止力となる。

そのため、日本はこの古代魔法を何としてでも手に入れなければならない。

そのためにも、古代文明の調査は必須事項だ。


しかし、必須事項であるとはいえ、それができるかどうかは別。

今は、遺跡内に隠れているであろう伏兵を、遺跡を崩さないように撃滅、占領すべきなのだ。


……まぁ、フサワ湾岸貿易課ビルを占領できれば、フサワ湾岸貿易港全域が日本の占領下になるため、わざわざここを占領する必要もないといえばないのだが……。


調査は早期から始めたほうが効率的だろう?


実際、占領したらすぐさま調査を始められるよう、

「あまぎ」には国立地質学研究所や新日本空間研究所、

日本遺跡保全協会などから派遣された研究班が多数上艦している。

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