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魔導士が非道すぎる


「近接戦闘なんて訓練で習ってない……!」


彼女が、ボソッとつぶやいた。

現代の地球と違い、この世界の銃は後衛専用の武器として使われる。

そして、後衛は近接戦闘を行うことがほとんどなく、その必要性もないとされているため、多くの魔銃歩兵は近接戦闘訓練を受けていない。

訓練で受けるのは、魔導銃の扱い方と簡単な近接武器の使い方のみだ。

そのため、魔銃歩兵は近づかれたらおしまいであり、前衛の兵士は後衛の魔銃塀に攻撃が向かないように立ち回る必要がある。

しかし、今回は四番機の動きが素早く、グリフォンナイトが反応できなかったのだ。


「こ、こっちに来るなっ!」


魔導銃の発砲音が響く。

しかし、狙いがしっかりしていないため、弾が四番機に当たることはない。

現在、四番機はゆっくりと残った魔銃歩兵に近づいて行っている。

これなら、グリフォンナイトが倒すこともできそうなものだが、先ほどからあちこちでなっている現代銃器の銃声は、グリフォンにとってストレスであったようだ。


「お、おい! 落ち着けっ! 大丈夫だから、どうどう!」


先ほどの四番機の攻撃で何かが切れたのか、グリフォンは非常に取り乱し、上にのっている兵士の言うことをほとんど聞いていない。

兵士は何とかしてグリフォンを落ち着かせようとしているが、まったく効果はないようだ。


『救援します!』

「うわっ!?」


そういって、救援に現れた二番機がグリフォンナイトの手綱を打ち抜く。

兵士は暴れるグリフォンから振り落とされ、地面にたたきつけられた。

グリフォンは、さらに混乱している。

しかし、上下関係を叩きこまれたのか、落下した兵士に危害を加えるつもりはないようだ。

グリフォンだけではトークロイド達に危害を加えることもないので、二番機、三番機はそれを無視して進んだ。


『三番機、五番機の修理を』

『了解』


二機は二手に分かれ、二番機は四番機、三番機は五番機のほうへ向かう。

五番機はOSが抜けてしまったのと一部が破損しただけなので、OSを再インストールし、応急修理を施せば何とか動かせるだろう。


『四番機、大丈夫ですか?』

『問題ありません。あの兵士の治療をお願いします』


四番機は、そう言って気絶した兵士を指さす。

銃は残った魔銃歩兵に向けたままだ。


『了解』


二番機が気絶した魔銃歩兵に向かってかけていくと、四番機は残った魔銃歩兵にいう。


『降伏しなさい』

「……は、はい」


彼女は魔導銃を放り捨て、両手を挙げた。

その直後、上から降ってきた炎球が彼女を燃やし尽くす。


「い、いやぁぁぁ! あづいあづいあづいぃぃぃぃ!」


魔銃歩兵の絶叫が響き渡る。

二番機が上を見ると、塔の上から魔導士がこちらを見ていた。

おそらく、奴が魔銃歩兵を燃やしたのだろう。


二番気が魔導士を確認する直前、四番機は消火システムを起動し、魔銃歩兵に消火剤を散布する。

炎は消えたが、服はほとんどが燃え、残った布切れが焼けただれた皮膚にくっついていた。

彼女は倒れこみ、苦しそうにうめき声をあげている。

気道が圧迫されているのか、呼吸するたびに口笛のような音が鳴っているのが聞こえた。


「し、じにだぐない……だれが……」


そこまで言うが、もうちゃんとした声を出すこともできないのか、それ以降はうめき声しかあげなくなってしまった。

彼女のやけどは、現代医術では治すことができないほどのものだ。

一応、それなりの対処ならできるかもしれないが、それも本格的な総合病院でないとできないようなもの。

そんな治療をここでできるわけもなく、四番機は「せめて痛みは感じないように」と、持っていたモルヒネを打ち込んだ。

少しだけ楽になったような顔になるが、苦しいことは変わりないようである。

三番機の修理で復活した五番機に彼女のことを任せ、二、三、四番機は塔へと向かった。

新コーナー・異世界兵種紹介

第一回 魔銃歩兵

その名の通り、魔導銃を持つ歩兵。

機動力を重視しており、鎧を着ていない。

魔導銃自体は魔導文明圏にも存在するが、しっかり利用しているのはそれよりも西の地域だけだ。

ルヴトレムの場合、初期型魔導銃を持つ一般魔銃歩兵と改良型魔導銃を持つ上級魔銃歩兵が存在。

一般魔銃歩兵は一リロードで三発しか撃てないのに対し、上級魔銃歩兵は一リロードで五発まで撃つことができる。

改良型魔導銃はマシンガンのような姿だが、連射力は初期型と変わらない。


***


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