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「エミクロン」の戦い

~「エミクロン」艦橋~


「敵艦隊の上空に到達しました!」

「よし、主砲に弾を装填。木っ端みじんに吹き飛ばしてしまえ!」


そう言ったのは、飛行戦艦「エミクロン」艦長、レン・アスタール。

ミヤーウラ空軍学校を首席で卒業し、幹部試験も満点で突破。

その後、飛行戦艦「エミクロン」の艦長になった超エリートだ。


「装填完了!」

「よし、標準を――」


直後、「エミクロン」が大きく揺れる。


「なんだ!?」

「敵航空戦力による攻撃です!」


窓の外を見ると、大量のワイバーンが空を舞っていた。

敵艦隊の中に、ワイバーンを乗せた船……空母ならぬ竜母がいたのだろう。


「ドラゴンの攻撃程度でこの船は落ちない! さっさと主砲を標準しろ!」

「だ、駄目です! 敵機が邪魔で標準できません!」

「なんだと!? 対空機銃は!」

「無理です! 早すぎて標準が追いつきません!」


彼らは知らないが、このワイバーンは「ワイバーンウィング」と呼ばれるワイバーンの遺伝子改良型だ。

古代魔法文明が野生のワイバーンをもとに作った生物で、繁殖能力と機動力に優れる。

ただ、攻撃力はあまり高くない。

そのため、その繁殖能力を利用して大量にワイバーンウィングを生産、それによる物量攻撃で戦うのが、ワイバーンウィングを利用する国々の基本戦略である。

それは、国ではなく企業のルヴトレムも変わらない。

また、体表は固く、矢などは簡単にはじき返してしまう。

ただ、銃弾に耐えられるほどではない。

しかし「エミクロン」の対空機銃は旋回速度が低いため、ワイバーンウィングの速さに追いつけないのだ。

なお、攻撃手段は爪によるひっかき攻撃やファイヤブレスくらいしかない。


「と、とにかく撃ち続けろ!」


***

~「エミクロン」12番腹部対空機銃~


「くそっ、動きが素早すぎるっ!」


「エミクロン」に搭載された対空機銃は「20mmルイヤエット対空機銃」。

ミヤーウラの重工業系企業、ルイヤエット重工業が作成し、帝国暦1913年に正式採用されたものだ。

この機銃は2連装で、連射速度はそれなりに早いが、旋回速度は初期複葉機に合わせているため、ワイバーンウィングには追い付かない。

そのため、彼らはワイバーンウィングの群れに翻弄されていた。

しかも、旋回と発射はそれぞれ別の兵士によって行われる仕様であるうえ、旋回用の席からは外が見えない。

これは、旋回担当の兵士が窓から撃たれてしまわないようにする工夫だ。

最も、現場の兵士からは不評なのだが。


「右右右右!」

「はいはい!」

「違う左!」

「右っつたろお前!」

「いいからはよ!」

「わかったよボケ!」

「あっ、右!」

「はい!」

「左、あっ、右! いや左!」

「どっちだよボケェ!」

「右、右!」

「はいはい右ね!」

「違う左!」

「ぶち殺すぞ」


二人体制での機銃操作は混乱だらけである。

敵の量が多いうえ、どれも機銃の旋回速度を上回っているのだ。

それも仕方ないだろう。

ちなみに、機銃標準用の窓は小さい。

窓から銃弾が飛び込んできたら大変だからだ。

ただ、これのせいで標準も難しくなっている。

その上、銃は上下を向きにくい。

そのため、多くの場合は同じ高度の敵機を狙わなきゃならないのだが、わざわざ対空機銃と同じ高度を飛ぶバカはいないだろう。

そのため、どうしても対空機銃の操作は大雑把になる。


「左! 右!」

「左ぃ! 右ぃ!」

「よしきたぁ!」


そして、ついにワイバーンウィングを撃ち落とすことに成功した。

一騎だけだが。

あたりさえすれば、どんなへなちょこ弾でも致命傷になるのである。


「次、左!」

「左ね、左!」

「あっ、右!」

「みぃぎ!」

「あーっ、前! 前ぇ!」

「前!?」


ワイバーンウィングが対空機銃に突っ込み、銃身をへし折った。

鋼鉄製の銃身が落ちて行き、下を飛んでいたワイバーンウィングの騎手に命中。

彼は、そのまま銃身と一緒に落ちて行った。

ワイバーンウィングは主を失い、しばらく右往左往。

近くの対空機銃に撃たれ、同じように落ちて行く。


「とんでもない奇跡……」


兵士はそうつぶやきながら、席から離れる。

この機銃はもう使えないので、上部の機銃に走った。

上部機銃は腹部機銃に比べて防御が薄く、なおかつ攻撃力も弱い。

これは、「エミクロン」が対地攻撃を重視しているためだ。


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