魔法飛行船
第八護衛隊群がエーンヤード大陸に向かっているそのころ。
ルヴトレム企業共栄圏、ルヴトレム株式会社上空。
RQ-4グローバルホーク無人偵察機が、本社ビル周辺の偵察を行っていた。
ルヴトレム株式会社の社屋は、巨大な中央ビルと、その周りに広がった街で構成されている。
中央ビルは、ホーム・インシュアランス・ビルを二つ重ねたような姿で、1900年代初期のアメリカを感じさせた。
屋上部分には大陸共通語で『ルヴトレム・コーポレーション』と書かれた看板が取り付けられており、その存在感をこれでもかとアピールしている。
ビルの周りを何周かしたのち、RQ-4は戻っていった。
***
「いったか……?」
街の中。
ルヴトレム社員たちは、窓からRQ-4が去るのを眺めていた。
RQ-4が見えなくなると、社員の一人がこう叫ぶ。
「シートをはずせ!」
室内に置かれた巨大な物から、シートが外されていく。
その下に、巨大な飛行船の骨組みが姿を現した。
魔法飛行船。
浮揚ガスの一種である「軽魔力」を利用した飛行船の総称である。
魔法飛行船のほとんどは装甲飛行船と呼ばれる硬式飛行船を越えた硬さを持つ飛行船だ。
これは、軽魔力の密度が空気の約80分の1であるために実用化できたものだ。
現実に存在する物質で最も軽いものは水素分子であるが、水素の密度は空気の約14分の1。
軽魔力は、水素よりもはるかに軽い物質なのである。
そのほか、魔法飛行船にしかない種類として、「幻想紡ぎ」と呼ばれる特殊な船が存在。
これは、古代魔法技術を応用して、空間を歪め、船体をほとんど見えないようにすることができるものだ。
これにより、敵の目を欺きつつ、静かに接近することが可能となる。
幻想紡ぎの船は、情報収集や偵察任務に適しており、特に戦略的な利用が期待されているが、その数は非常に少ない。
なぜなら、これを作るのに必要な古代魔法技術がすべて失われているためだ。
また、現代で利用されている幻想紡ぎの船は、ほとんどが遺跡から発掘されたものを何とか利用可能にしたものである。
次に、「魔力増幅」と呼ばれる技術も魔法飛行船にしか見られない。
これは、魔力を増幅する特殊な装置を船体に組み込むことで、魔法の使用を強化するものである。
魔法攻撃や防御の能力を高めるために広く利用されており、戦闘や危険な任務に従事する際には欠かせない装備となっている。
が、やはりこれも古代魔法技術を利用したものであり、新造はできない。
そのため、ルヴトレム企業共栄圏はやはりヘヤルーサ砂漠から装置を発掘して利用している。
ルヴトレム企業共栄圏外の国はルヴトレム企業共栄圏の企業達から購入するほかないが、その値段が非常に高いため、やはりあまり使われていない。
さらに、「精霊共鳴」という技術も注目されている。
これは、船体に精霊を封じ込め、その力を利用して船の機能を補強するものである。
精霊の力により、船の操縦性や速度が向上し、長距離航海や過酷な環境下での活動において大きな利点を持つのだ。
この技術は近代になって作られた現代魔法技術の一つだが、原理的には古代魔法技術の応用であるため、魔力増幅同様にルヴトレム企業共栄圏以外ではあまり使われていない。
さて、そんな魔法飛行船であるが、現在ルヴトレム株式会社でつくられているこれは、空中戦艦「アエリアル・ヴァンガード」。
分厚い装甲と巨大な魔導砲を搭載した魔法装甲飛行船の一つだ。
これが完成すれば、上空の制空権を取り戻せると、ルヴトレム株式会社上層部は考えていた。
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