研究棟にて
~加原重工ルヴトレム支社・トラックヤード~
「オーライ、オーライ、オーライ」
雨の日。
新世界にしか存在しない物品たちが、加原重工ルヴトレム支社に搬入されていく。
その様子を、佐々波ナオは満足そうに眺めていた。
彼女は、茶髪に白衣、その下は黒いスーツという、加原重工の社員らしい身だしなみをしている。
加原重工技術部研究開発課、新世界技術研究チーム主任。
それが、彼女の肩書であった。
専門は航空宇宙工学だが、生物学や地質学、物理学、また機械工学にも精通している。
「これで、やっと研究が進む」
ナオはそうつぶやき、傘を強く握った。
雨音は強くなる一方で、合羽を着た作業員たちが、雨の中で黙々と作業を続けている。
トラックヤードは重機の音や雨音が混ざり合い、異様な雰囲気を醸し出していた。
***
~加原重工ルヴトレム支社・研究棟内部~
運び込まれた物品の一部が、スチール製の台車で運ばれている。
それは、プラスチック製のカプセルのように見えた。
「これは?」
ナオは、雨でぬれた体をふきながら、台車を押す職員にそう尋ねる。
「あっ、研究主任。これは、『魔獣』と呼ばれる生物だそうです。なんでも、無機物に寄生するとか……」
「無機物に寄生? 不思議な生物ね。研究のし甲斐がありそう」
「ですね――うわっ!」
その時、台車にのせられていたカプセルから、
黒い粘液のような物体……『魔獣』が這い出て、台車を押していた職員の顔に飛びついた。
研究員はしばらくじたばたしていたかと思うと、痙攣し、動きを止める。
そして、ゆっくり立ち上がると、皮膚の色が黒ずんでいき、化け物に姿が変わってしまった。
化け物は、近くの職員に襲い掛かる。
その職員も、同じように化け物になり、周りの職員たちに襲い掛かってきた。
職員たちは散り散りばらばらに逃げ出し、化け物はそれを追いかけてくる。
加原重工ルヴトレム支社の裏には、邦人護衛のための第八護衛隊群が停泊しているはずだ。
そこまでむかえれば、自衛隊に助けてもらえる。
ほとんどの社員がそう考え、裏口へと走っていた。
***
~「しなの」艦橋~
一方そのころ、加原重工ルヴトレム支社の裏に停泊する第八護衛隊群。
その旗艦、「しなの」の艦橋にて。
「司令! こっちに人が逃げてきています!」
「え? いったいなんで――」
直後、異形の化け物が、建物の窓をぶち破り、裏庭に現れた。
その化け物は、「しなの」へと走る人々を襲っている。
それを見て、さくらが言った。
「なんてこった……避難者を収容しろ! 急げ! 満載になり次第出港するぞ!」
「りょ、了解!」
避難者は、急いで「しなの」に乗っていく。
全員が乗ったことを確認すると、直樹が出港号令を下した。
「出港用意! 錨鎖上げ方! 両舷前進原速! 赤黒なし、経路――」
直後、化け物が「しなの」にとびかかってくる。
その衝撃で、船が大きく揺れた。
「うわっ!」
「け、経路はなんでもいいから、とにかく陸地から離れろ!」
「りょ、了解!」
化け物は、艦橋部分に取り付き、見張り台部分から内部に入ってこようとしている。
見張り要員が鉄帽で殴りつけると、化け物は引き剥がれ、海に落下した。
港からはだいぶ離れているので、化け物がこちらに飛びついてきたとして、被害は発生しないだろう。
そのことに気が付いたのか、化け物は飛んでくるのをやめて、寄り集まっていく。
そして、大きくなったかと思うと、それが爆発した。
同時に、「しなの」含む第八護衛隊群の護衛艦たちの電子機器が軒並み機能を停止する。
「ECM!?」
「電子機器が動かなくても、航行はできるだろ!? とにかく、陸地から離れるんだ!」
「りょ、了解!」
第八護衛隊群は、陸地から離れて行く。
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