開戦とルヴトレム企業共栄圏
その後、あの冊子は「しなの」によって国内に持って帰られ、政府の知るところになった。
政府は勇者と呼ばれる人々を『テリャティア帝国拉致被害者』とし、その返還を要求。
テリャティア帝国はそれを拒否し、日本に宣戦布告。
両国は戦争状態に突入した。
この情報は異世界中を駆け巡り、
ある組織が、これに対して動こうとしていた。
***
~ルヴトレム企業共栄圏・株式会社グフノロン国家金融~
ルヴトレム企業共栄圏。
高度文明圏と魔導文明圏の西に位置する文明圏であり、
他の文明圏とは違い、『企業』が文明の中心となっている。
超資本主義社会であり、この文明圏を構成する企業達は利益追求の為なら何でも行う。
周囲の文明圏国家たちへの融資や商品提供などが、これら企業達の主要な資金源だ。
現在ではここを中心として超巨大経済圏が完成しており、
これによって発生した莫大な富は、ルヴトレム企業共栄圏を構成する企業達に分配されるが、
その多くは盟主国――この場合は親会社といった方がいいだろうか――の、
『ルヴトレム中央株式会社』に集中して集まる。
また、企業共栄圏を構成する企業達は、
ほぼすべてがルヴトレム中央株式会社の関連子会社であるため、
ルヴトレム中央株式会社が、現在の企業共栄圏における最大の影響力を持つ企業なのだ。
そして、株式会社グフノロン国家金融は、
企業共栄圏の中では珍しい、強い力を持つ独立企業だ。
ルヴトレム企業共栄圏を支える八本の経済的支柱の一柱であり、
残りは『サウナリア重工業』『シャマジ商社』『セイレーン警備』
『カミナヅキ運輸』『ドヴェルグ鉄鋼』、そして『ルヴトレム中央株式会社』である。
株式会社グフノロン国家金融は、周辺文明圏の国家たちに融資をすることによって、 その国家群に対する強い発言力を獲得。
その融資額は当然の事ながら莫大であり、それら国家群の経済と軍事は彼らによって支配されていると言っても過言ではない。
この企業はテリャティア帝国に対しても融資を行っており、
その代わりに『勇者』を手に入れていた。
グフノロン国家金融は、『勇者』が持つ特殊な知識や技術を利用し、成長を続けている。
心の内では、有用な知識を持つ『勇者』を、
何も考えずその身体的、魔法的能力だけで利用価値を考えようとするテリャティア帝国を見下してさえいた。
ちなみに、グフノロン国家金融が引き取った『勇者』は様々な仕事に割り当てられるが、
全員が基本的人権を保障されており、テリャティア帝国での扱いとは天と地ほどの差がある。
閑話休題。
さて、そんなグフノロン国家金融にも、テリャティア帝国が日本と開戦したという情報は入ってきていた。
社長室にて、社長と専務が、それについて話している。
「テリャティア帝国がニホンと開戦した、か……」
「はい。諜報部からの情報では、ニホンは技術的、文化的にもテリャティア帝国に勝っていると考えられています。テリャティア帝国への融資を打ち切らなくては、わが社にきわめて大きい損害が発生するでしょう」
「ふむ……それはそうだが、テリャティア帝国への融資を打ち切ったら、勇者の安定供給が止まってしまう。それはどうするんだ?」
「問題ありません。我々が必要とするのは、勇者たちの知識と技術。
テリャティア帝国と戦おうとしているニホンという国は、勇者の持つような知識や技術を大量に保有していることがわかっています。
彼の国と契約を結べば、勇者がおらずとも、知識や技術を手に入れることができるでしょう」
「しかし、彼の国はテリャティア帝国と違い、高い経済力を持っていることがわかっている。
テリャティア帝国とは違い、融資で知識や技術を得ることはできないぞ?」
「そこも大丈夫です。テリャティア帝国で召喚されている勇者たちは、もともとニホンの住民だったことがわかっています。
それは、現在わが社内にいる勇者も同じですので、
彼らをニホンに引き渡せば、契約を結ぶことは可能でしょう」
「なるほど……よし、営業部に、ニホンと接触するよう伝えておけ」
「承知いたしました」
「あ、あと、テリャティア帝国への融資は止めるように」
「はい」
こうして、グフノロン国家金融は、日本と接触するために動き始めた。
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