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接敵

~「しなの」艦橋~


「萌え袖ってさぁ」


突然、さくらがそう話し始めた。


「いろいろ急すぎる。もっとこう、情緒ってもんはないんですか」


直樹がそう返す。

今現在、「しなの」は「さんふらわあ しぐれ」に向かっている真っ最中。

こんなくだらないことを話すような雰囲気ではなかった。


「萌え袖ってさぁ。実際あれやって萌えるの?」


彼女は、直樹の言葉を無視して続ける。

ため息をつきながら、直樹が答えた。


「まぁ、よく知らないけど萌えるんじゃないですか? よく知らないけど」


念を押すように、そう付け加えた。


「でも、私みたいな美人がこう……萌え袖やっても萌えないじゃん?」


さくらは、自分の手を袖に入れ込み、そう言った。

いわゆる萌え袖ではあるが、彼女の容姿ではまったく似合わない。

もうちょっと童顔なら、似合ったかもしれないが……

彼女もそのことを理解しているようで、すぐに袖を戻した。

その様子を見ながら、直樹はつぶやく。


「しかし、自己肯定感高いのか低いのかよくわかんねぇ発言だな……」

「ん? なんて?」

「いや」

「で、萌え袖って萌えるのかな?」

「う~ん……人によっては萌えるんでしょう。よく知らないけど」

「なるほどぉ……」

「でも、なんでそんなことを急に?」

「いや、なんとなく」

「えぇ……?」


ねぼけてんのかこの人。

直樹は、そう思いながらも視線を前に移す。

その直後、CICからの通信が入った。


『CIC艦橋。まもなく、フェリー「さんふらわあ しぐれ」が目視距離に入ります』

「そうか。……『さんふらわあ しぐれ』を曳航しているあの船は?」

「不明船にテリャティア帝国軍旗を確認! テリャティア帝国海軍船と思われる!」

「なんだと? ということは……」

「『さんふらわあ しぐれ』は、テリャティア帝国に鹵獲された、という事でしょうね……」

「マジかよ……」


そう言いながら、さくらは双眼鏡を除く。

「さんふらわあ しぐれ」の甲板に、武装した兵士たちがうろうろしている。

兵士のほとんどは剣や盾、クロスボウ、杖などの武器を持っており、

防御はヘルメットとちょっとした装甲程度だが、

将官クラスと思われる兵士は、

マスケット銃によく似た小銃を携帯しており、板金鎧を装着している。


「どうにかして取り返さなきゃな……」

「でも、どうやって取り返すんですか?」

「取り合えず、通信しよう。宇宙人ってわけじゃないんだから――

いや、地球人からしたら宇宙人かもしれないが――話は通じるさ。発光信号を送れ」

「了解」


「しなの」は相手に向かって投光器による発光信号を送る。


「……反応ありませんね」

「ああ。通じてないのか……?

別の信号形式で――『敵艦発砲!』なに!?」


幸い、砲弾は艦にあたることなく、海に落ちた。

しかし、それに気を取られている間に、

敵艦は「さんふらわあ しぐれ」を曳航し、海域から離れようとしている。


「とにかくあの船を止めないと!」

「しかし、攻撃するにしても我々は演習用のペイント弾やゴム弾しか持ってませんよ? どうするんですか?」

「それは……まぁ……気合でしょ」

「だめだこの人。なんで海将補になれたんだろう」

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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