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フェリー「さんふらわあ しぐれ」

~フェリー「さんふらわあ しぐれ」ブリッジ~


「機関の状況は?」

「だめです。全く動きません。非常電源は起動していますが……」

「ほとんど意味はないか。まぁ、推進力が無きゃこの海流から抜けることはできないからな……」

「近くにいた海自の護衛艦が援助のために向かってきていますが、到着までは結構な時間がかかるそうです。幸い、北部航路内なので、通常と比べたら早いですが……」

「まぁ、今は待つしかあるまい」


「さんふらわあ しぐれ」は、抵抗もできずにただただ流されていく。

舵は動くので、暗礁などを避けることはできるものの、それだけだ。


「このままじゃ、サエナルト大陸に漂着するな……」

「サエナルト大陸……仮想敵国の、テリャティア帝国がある大陸ですよね? 危険じゃありませんか?」

「ああ……最悪、キングストン弁を開くことも考えなきゃな」


キングストン弁。

細かいことは本筋からずれるので解説しないが、

『開くと船が沈む弁』だと考えてもらえばいい。


「まぁ、それは最後の手段ですよね」

「ああ。護衛艦が来る可能性のほうが高いからな。

海流で流されてるだけの船と、それを追う動力を持った船。

どちらが速いかは一目瞭然だろう……ん?」


流される「さんふらわあ しぐれ」に、数隻の船が近づいてきていた。

護衛艦ではない。

遠目からではよくわからないが、 軍艦のように見える。

テリャティア帝国軍の艦船の可能性が高い。


「こ、こっちに近づいてきます!」

「違う! こっちが海流で近づいて行ってるんだ!」


***

~テリャティア帝国海軍・哨戒船「オプラセート」艦橋~

哨戒船「オプラセート」。

テリャティア帝国海軍の機帆装甲船で、哨戒艦隊の旗艦だ。

50mm前装式大砲を両舷に20門、

100mm後装式大砲を船首に一門搭載している。

魔導機関(蒸気機関に酷似)を搭載しており、

この海流の中でもある程度安定して航行可能だ。

哨戒艦隊の他艦も、程度の差はあれど中期魔導機関を搭載している。

ただ、魔導機関の燃料として使用される高濃度魔力は燃えやすいため、

魔導文明圏以外ではあまり使用されていない。


「不明船、こちらに近づいてきます」

「見た事のない船だな……通信は?」

「応答ありません」

「仕方がない。発光信号を使え。ノカータ形式だ」

「了解」


ノカータ形式発光信号。

地球でいうモールス信号とよく似た物であり、

少々言い回し等は変わるものの、モールス信号での交信も可能だ。

「オプラセート」が魔法での発光信号を送ると、相手から通信が返ってくる。


「『ワレ、日本国所属貨客船「サンフラワア シグレ」。

機関損傷ニヨリ航行不能。シカシ救援必要ナシ』」

「ニホンだと? これは、レターまで曳航したほうがよさそうだな……

ま、とりあえず乗っ取るぞ」


レターとは、テリャティア帝国東部に位置する軍事都市だ。

「オプラセート」は「さんふらわあ しぐれ」を乗っ取るために近づいていく。

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